2016年夏、いつものあやしい探検隊はソウルにいた。椎名誠(最近あまり名前を聞かない)の怪しい探検隊は自然を目指す健全なものだけれど、こちらは街の怪しい所を探検する部隊である。この前に韓国に来たのは1987年のソウルオリンピックの前年だった。本当に久しぶりである。30年近く間が空いたのは、そのときの出来事がトラウマだったからだ。

久しぶりの韓国、酒と食事がトラウマだった
当時の韓国は、現在のように反日が強くなくひたすら経済成長を目指していた。提携先の会社の専務と歩いた漢江のほとり(グエルムはまだいない)や、博物館に展示された青磁の数々、水田を耕す牛の姿は今でも忘れがたい。
まだ戦争の影響が色濃く残り、金浦空港に着陸するときは飛行機の窓を強制的に閉めさせられた。道路には車両の通行を遮断する装置があり街に防空演習のサイレンが響いた。戦時中の国であるのを嫌でも感じる。それから30年、世情は随分変わったらしい。入国審査を待つ間はドキドキした。
トラウマは初めての宴会で眞露を飲みすぎ意識を失ったことだ。返杯を断るのは失礼だと生半可な知識を持っていたのと、自分は酒に強いと思っていたから勧められるまま杯を受け続けた。酒が強いなど井の中の蛙の最たるもので、韓国人の強さに到底及ばず気絶してしまい、翌日は超二日酔い胃はキムチや松露茶を全く受付ない。
だが、今回の仕事は韓国の会社のチームと合同して行う。チームワークのために韓国料理が嫌いと言えず食べ続けた。もともと漬物など発酵食品の酸味が苦手だった。それなのにキムチは無料で、無情にもこれでもかと出てきた。眞露もキムチも嫌いなった。

旅の教訓 骨付きカルビは食べるべきである
そんなことを思い出している間も怪しい探検隊は目的地に向かって進んで行く。経済が発展すると風俗の締めつけが厳しくなる。ソウルも随分厳しくなったらしい。さて何処を目指すか腹ごしらえをしながら相談しよう、スタミナをつけるため焼肉を食べよう。ガイドさんの(今回は女性ガイドさんつき)お勧めは王妃屋(たぶん)という店だった。
昔の記憶でOBビッチュウを頼もうとしたが、最近はカスビッチュウがメジャーらしい。キムチは遠慮する。骨付きカルビもサムギョプサルもなかなかに美味い。食べながら相談するが、みんな口一杯に肉をほうばるから聞き取りにくいこと夥しい。「ですからモグモグ」「えっグビグビ」「ネットの情報では」「あっ、肉焦げてる」で話が進まない。
見かねたガイドさんが「私が案内します」「えっ!」ガイドさんの案内でめでたく店に到着できた。日本のクラブとスナックの中間のようで歌うだけの店じゃないかと心配になるが、間違いなく女の子は部屋までつきあうとママはいう。
韓国は売春は非合法になっている。できるならそんなの関係ないと盛り上がる(良くないです)代金は飲み代と女性の分をいれて500,000ウォンとけっこう高いが、酒で妄想を膨らまし、焼肉で燃料を補給した暴走列車はもう止まらない。女性達は後からホテルへやって来るという。

旅の教訓 可愛い女性とのデートはとにかく楽しもう
やってきたのはイさん(仮名)というネイティブに近い日本語を話すアガシだった。着くと暑いから早くシャワーを浴びたいという。さっさと終わらしたいタイプかと心配になるが、言葉の通りほんとうに汗をかいていた。逆にとても積極的だった。
「誰とでもこうではない、お客さんが優しい人だからよ」今度は二人で汗をかいたあと寄り添いながら囁いてくる。営業用とわかっていても喜んでしまう。「とても良かったよ。明日もお店へ行こうかな」これは挨拶のようなものだ。彼女は胸に顔をうずめながら「お店に行かずに会いたい」ときた、ほんとにお上手。
「お店はいいの」「大丈夫、言っておくから」「じゃ5時にホテルのロビーでいいかな」「日本風の焼き鳥屋さんへ行きたい」「いいよ、いいよ」と進んでしまった。このチームは朝に昨夜の評価をするのが恒例になっている、ただ見栄が入るので正確ではなく単なる自慢話になる。明日の夜は漢江クルーズの予定だったはず、朝に単独行動を申告しなければならない。自分勝手との批判を覚悟した。
さて当日、約束通りロビーで待ち合わせてタクシーで出発する。延世大学や梨花女子大がある地区に向かう、けっこう遠い。彼女は立派な鉄道の駅近くで降りるとドラッグストアにさっさと入っていく。この奥に焼き鳥屋があるのだろうか。
「ここに欲しい日本のサプリメントがあるの買っていい」この距離感の近さはどうだろう、それが可愛いく思えるように男はできている。サプリメントをカゴに入れレジに行き振り返って微笑むと、ハイと財布を出して駆けつけた。

梨花女子大界隈でデート
そして焼き鳥屋である。焼鳥屋は日本の秋吉に似ていて日本の地酒などが置いてある。焼鳥は本格的でなかなか美味しい。大学の近くなので若いお客が多く、カップルが楽しそうに食べている。若い娘はどこの国でも可愛いなと見とれていたら肘でつつかれた。
お腹がいっぱいなったのタクシーで明洞へ戻る、そろそろホテルかなと思うと「マッサージに行きたい、友達がお店を始めたの、良いかしら?」悪いと言えるはずがない。おじさんのバッテリーは古いスマホと同じですぐ減ってしまう。肝心の時に電池切れになったらどうしよう。
並んでマッサージを受けると思いのほか気持ち良い。ふたり並んで受けるのが楽しい。彼女を見ていると不覚にもすこし元気になってしまった。だがここでは使えない。いつものようにキメてぶっ飛ばそうぜ・・・バッテリーはビンビンだぜと忌野清志郎を思い出す。
エックスサーバー
彼女は、次はどこへ行くのだろうと怯える心を見透かしたように「ホテル帰りましょ」と笑う。主導権は完全に彼女にある。シャワーを浴びた彼女は、昨夜にまして積極的だった。「ベッドから降りて、ここに立って」と自分はベッドにいてお尻をむけてくる。これはまるでAVじゃないか、彼女の指導で年甲斐もなく頑張ってしまい、終わると疲れてすぐ寝てしまった。

旅の教訓 彼女に鍵を託して出ていくのは良くないけれど
遠くから電話の音が聞こえる、寝ぼけながら取ると「もう出発だよ、みんな待ってる」と聞こえた。そうだった、今日は水源城と美味いビビンバの店ツアーだった。返事をして横を見ると彼女が寝ている。帰らなかったのか。どうやら彼女も頑張りすぎ寝てしまったようだ。
寝顔が可愛い。「部屋の鍵はフロントに預けておいて」かわいそうだけど起こして部屋を出る。彼女は寝ぼけた声で「わかった」と返事をしてまた眠ってしまった。横たわる姿がなやましい。シーツから出ている太腿が白く光っている。これを残して行くのはもったいないが仕方がない。彼女を信じて部屋をでた。

ありがとうも言わずに別れてしまうことになったが、ドラッグストアやマッサージ店で見た彼女の笑顔は良い思い出だ。サプリメントやマッサージでよぶんにお金を使ったが、ショートなのに泊まっていったのでお相子だ。
彼女にとって昨夜はどのような時間だったのだろうか。楽しんでくれたのなら嬉しい。風俗という限られた状況でも、気持ちの交流があれば過ごす時間は濃厚になる。濃厚になれば快感が増す。風俗の醍醐味はそこにある。

今夜のソウルはそんな出会いをくれた。朝に余裕があればもう一回許してくれたかもしれない。早起きは三文の得である。
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