食べきれなかった小籠包がテーブルの上に並んでいる。店の「小姐」いや「小妹」は先程から早く終われのオーラを出している。小さなタトゥーが彫られた腕が色っぽい。あれもこれも食べたいと注文するのでいつも食べきれなくなってしまう。ディンタイフォン(鼎泰豊)では小籠包の注文しすぎに要注意である。

旅のお勧め 台北の夜はディンタイフォンから
鼎泰豊は日本でも馴染みの小籠包の店である。台湾へ来るとやっぱりディンタイフォンへ行こうとなる。いつもはリージェント・タイペイ(台北晶華酒店)の近くの店に行く。日本人の扱いに慣れていて居心地が良い。台湾でも人気店で直ぐに満席になってしまうので早めにいかないといけない。(2024年に聞いた話では、この店は無くなったとの噂がある、便利な場所だったので本当なら残念だ)
店がいっぱいだと隣のビルの別室へ案内される。隣のビルの階段は先に店があると思えない、ちょっと怪しい雰囲気だが、中に入ると普通の店内である。まずはビールと小籠包だ。ビールはもちろん台湾ビールである。
小籠包はエビ入りやお茶入りやなど色んな種類がある。そのなかでもプレーンが一番美味しい。焼売も種類が多いけれどやっぱりプレーンが美味しい。小籠包以外にもメニューはたくさんあり、今回は野菜の炒めものと焼飯を注文した。この焼飯がとても美味しい。
衣食住足りて性欲を知る、腹が膨れるとすぐに鳩首会談が始まる。「今夜はどうしましょう」「まずは両替いってKTVへ行きましょう」「昨日のところがいいですかね」「いっひっひ・・・」「とりあえず行こう」「行こう」と下品に笑う。


旅の教訓 「売春が合法なのは特定地域だけ」を覚えておこう
台北は色んな風俗がある、サウナ、置屋、ピンポンマンション、キャバクラ(KTV)、デリヘルである。それぞれの楽しみ方があるが、行きやすいのがキャバクラである。台湾は売春が10年前に合法になったと言われるがそれは特定の地区に限られる。たいていの風俗は指定地区以外にあるのを忘れてはいけない。
林森北路は日本と同じでお代官様のお目こぼしで存在しているのだろう。キャバクラでもほんとうはお持ち帰りはいけない。だが男のという欲望の列車はブレーキが無い。だからレールをひく人が必ず現れる。ディンタイフォンから林森北道のキャバクラ街までは歩いて15分くらいである。中山界隈は狭いエリアに施設や飲食店が集まっているので、道がわからなくても歩いていればいつか着く。
地下街は新宿駅のようラビリンスなので地上のほうがわかりやすい。両替商を目指してブラブラ歩く。両替店は烏龍茶を売っている。昔からお茶は台湾の重要な輸出品だった。その儲けを貯めたお金で両替商を始めたのだろうか。両替店に着くと日本人グループが既に両替を始めている。どうみても同じ目的のおっさん達だ。なぜか緊張感が漂う。

旅の教訓 ポン引きにはついていかないこと
「今日もいくの」順番を待っているとおばちゃんが声をかけてきた。昨夜キャバクラまで案内してくれたおばちゃんのポン引きである。「そうだよ昨日の店だよ」「そう」で会話は終わったがおばちゃんが着いてくる。不思議に思いつつ歩いているとキャバクラの通りに着いた。
梅子というレストラン(ここは美味しい)の前を通りすぎると道の両側に店が並んでいる。コスプレや短いワンピースを着た小娘が立っていて客を呼び込んでいる。彼女たちを冷やかすだけでも目の保養になる。日本のネットの情報によるとサービスや金額は横並びのようだ。
どこへ入るか悩みつつも昨夜の店に入ることになった。通りに入って最初のシュガーなんとかいうお店である。小娘が入り口に並んで迎えてくれる。今日もまた楽しい時間が始まった。期待を膨らましながら席に向かう途中、さっきのおばちゃんと店の人が揉めていた。
今夜も私たちを連れてきたと言ってバックを要求しているらしい。「昨日はそうだけど今日は違うよ」というと「そうでしょ、図々しいのよ。あのような人に連れてきてもらったらダメよ。変なところへ連れて行くのがいるから。うちはもう覚えたでしょ」と叱られてしまった。東京でも台北でもポン引きについて行くのは賢くないのだ。

KTVといえば林森北路
ひょっとしたらあのおばちゃんは貧乏神かもしれない、今日はどうも調子が良くない。指名したい小娘がいない。仕方がなく知的な印象がする胸の大きい(我ながらこればかり)女性に声をかけた。だがどうも相性が良くない。
スマホを見せると「眩しくて見られない」話かけてもスマホを見ていて気が付かない。すれ違いが多いのである。こういう日は碌なことにならない。今夜は一人で帰ろうかと考えているうちに終わりの時間が来た。メンバーは夫々のパートナーを決めて盛り上がっている。
彼女を見ると感情を出さず黙っている。嫌がっているのだろうか。「かもさんは、どうするの」とママが迫ってくる。ママというのどこも明るくて押しが強い。「いいの」と言うと彼女が小さく頷く。嫌がっているのではないらしい。性格なんだろうか。
仕方ないので一緒に帰ろう。飲み代は1500元、更に7000元くらいを払う。彼女たちは後からホテルへやってくる。タクシーの中はいつものように盛り上がっているが今ひとつ乗り切れない。やっぱりやめておいたら良かったか、と後悔が黒雲のように沸いてくる。

旅の教訓 気に入った子がいないときは諦める勇気を持とう
部屋にやってきた彼女はますますクールな雰囲気になっている。キャバクラ嬢というより外資系のキャリアウーマンのようだ。これはこれで悪くないかもしれない。服を脱ぐと予想通り大きな胸である。さらに下品な表現になるが見事なまでに蓬蓬である。面積、密度、長さとも凄い。最近ツルツルばかり見てきたのでとても新鮮だった。いやはやこれはなんとも。
ただ外観の素晴らしさ程にはベッドの上は盛り上がらなかった。彼女なりに頑張る気持ちは伝わるがケミストリーは起こらなかった。好き者の私にしては珍しい。何が原因だったのだろうか。「衣食住足りて礼節を知る」と孔子は言った。この仕事はむろん衣はいらない。食は小籠包で足りた。住はホテルで足りている。足りないのは何か、やっぱり相性しかない。
相性の悪さに加えて、彼女が商売に向いていないのかもしれない。色んな悪条件が重なったのだろう。人は相手を直観で判断する。合わないないと感じたときは一緒に帰るのをやめたほうが良い。行為だけなら良いがそれだけでは寂しい。
そんな彼女が腕枕をしながらぽつりぽつりと喋りだす。弾力のある胸が触れている。キャバクラで働きだしてまだ長くない、こういう事もあまり得意ではない(時折すごく得意な女性がいる)とても緊張した。たしかにあの蓬蓬はプロらしくない。
彼女は独り言のように話すとラインを交換しても良いかと聞いてきた。嫌がっていたのではなかったと分かるとあら不思議、外資系のクールビューティが可愛い普通の女性に見えてくる。新たな反応が始まりそうになる。思わず彼女の茫々に手が伸びるが帰る時間が来ていた。今ならもっと激しくできたかもしれない。
ピンと来なかったときは一人で帰るのが良いと断言し難くなる。自分だけ一人で帰って寂しい思いをしたフィリピンの夜のような失敗もある。風俗はつくづく難しい。

遊戯三昧 良い時も悪い時も楽しもう
冷蔵庫からビールを取り出し、昼間に買っておいた葱爪餅を持って窓際に座る。遊戯三昧という言葉がある。良い時も悪い時も同じように楽しもうという意味である。風俗でも良い日もあれば悪い日もある、両方あっての醍醐味なのだ。今日はまぁまぁの出会いだったんじゃないか。
今夜は相性が良くないというバイアスに囚われていたかもしれない。何事も思い込みは行けない。ラインを開き「今日はありがとう」とモグラコロッケを付けてみた。

すぐ既読になり「今日はありがとうございました、ハート(黄色だけど)」が返ってきた。嬉しいのである。良いじゃないか林森北路。
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