受付カウンターの傍に立った女性が悲しそうな目で見つめてくる。カウンターの女性と少し話してはまたこちらを見つめてくる。彼女はオイルマッサージをしてくれた女性である。正規の料金は払ったが気持ち良いことのチップをまだ払っていなかった。

旅の教訓 チップを忘れないようにしよう
踏み倒そうと思ったわけではない。マッサージの後、すぐ渡そうとしたがあいにく100バーツ札が無い。部屋を出たら渡そうと思っていたが彼女から要求がないので帰って良いのかなと思ったのだ。彼女の悲しい気持ちは良くわかる。身体のマッサージだけでなくオヤジのあそこまで揉んだのだから、チップくらいは貰わけないとやっていられないだろう。
慌てて両替をして200バーツを渡すと「コップン・カー」やっと笑顔になってくれた。中国の女性は遠慮なく要求するから忘れようがないが、タイの女性は強く主張しないので気をつけないといけない。渡せて良かった、本当に。

ワット・プラシーサンペットの廃墟
アユタヤは遺跡とお寺が有名な観光名所である。タイへ来た人がまず訪れる名所だから付き合いで何度も来ることになる。何度来てもここは悪くない。ワット・プラシーサンペット(だと思う)は寺院の跡というより崩れかけたレンガの建物が立ち並ぶ廃墟だが感動する。
遺跡の周辺は賑わっているけれど廃墟の中は意外と人が少ない。かつてここにはアユタヤ王朝で最も重要な寺院と16mの黄金仏があった。その街は18世紀後半侵攻してきたビルマ軍によって破壊されてしまう。侵略者は相手国の心を滅ぼすために守護する仏の首をはねた。遺跡に首の無い仏像が並んでいる。
タイの強い日差しの下に白々とした仏像が並んでいる風景はもの悲しい。静寂に浸っていると不思議な感覚に包まれる。鬼哭啾々まではいかないが滅ぼされた人々の悲しみが漂っているようだ。

ワット・マハタート 菩提樹の根に絡まった首
はねられた首は地中に埋められたが長い年月が経つうちに地上に現れたものがある。ワット・マタハートの菩提樹の根が首を取り込み地上に持ち上げた。首は切れ長の目を半眼に開きアルカイックスマイル浮かべた顔を少し顔をかしげている。その顔は妖しくもあり怖くもある。米国のSF作家メリットの「黄金境の蛇母神」の女神はこのような顔だろうか。西欧の男性はこのような東洋女性の微笑みに惹かれるようだ。
今日はワット・ロカヤスタラームからワット・ヤイチャイモンコンを回ってここに来た。ワット・ロカヤスタラームに全長28メートルの巨大寝釈迦仏がいらっしゃる。ユーモラスなお顔で寝ている4頭身の大きな顔は親近感を感じさせる。見る価値あり。

ワット・ヤイチャイモンコンの急な階段
ワット・ヤイチャイモンコンは大きな黄金仏がある。信者は参拝すると仏様に金箔を貼っていく。けっして豊かでない人たちが金箔を貼る、その信仰心を象徴するように仏像は黄色に輝いている。寺院にお参りするためには歴史を感じる長い階段を登らないといけない。これが急でしんどいのである、二日酔いの身には厳しい。更に階段が急なので前を行く女性のスカートから伸びる脚が気になる。
お寺では背の高いレディボーイが大きな声で説明をしている。レディボーイの観光ガイドとはタイらしくていいじゃないか。説明はタイ語なので当たり前だがさっぱりわからない。彼女のお尻と胸に見とれるだけである。それでも聞いている人たちの信仰心は伝わってくる。いい感じである。

アユタヤの象使い
ワット・プラシーサンペットに象乗り場がある。タイと言えば象であり一度は乗ってみたいアトラクションだ。ただ一度乗れば十分でもある。象は二人乗りでゆっくりと歩んでいく。像の歩調にあわせて座席が揺れる。のんびりと揺られながら遺跡を眺めていると昔の人の気分になる。
多くの像が歩いているので別の像とすれ違う。人を乗せていない象が前からやってきくる。像使いがカメラを渡せの仕草をする。ためらうことなくカメラを渡すと象に乗る二人を写してくれた。象使いはカメラを返すと像をあやつり少し微笑んで去っていった。
象に乗っている時間は15分くらい、料金は400バーツくらいだ。やがて象は象乗り場に着く。乗り場に併設されているお土産売り場を見ているとき、ふと象使いにチップを渡していないのに気付いた。写真を撮って貰ったのだから当然チップを渡すべきだった。
象使いはチップを貰えると思っていたはずだが、彼は何も要求せず去っていった。彼の親切に答えてチップをべきだった、と一旦それに気付くともういけない、後悔が頭から離れなくなった。ハジャイで女性を早く返したときの後悔と同じように、喉に刺さった小骨になったのである。

旅の教訓 チップで後悔しないようにしよう
チップのある国では感謝の気持ちをチップで伝えたい。渡すのは自分のためでもある。旅は一期一会の世界だから一度渡す機会を逃すと次がない場合が多い。渡さなかったことを後悔しないように、良いサービスにはチップをドンドン渡したい。相場は50バーツで良いらしいが象使いには100バーツでも良かったと今でも思う。
バンコクに戻る途中「せっかくタイに来たのが、乗るのが象だけではいけないでしょう」と下品なことを誰かが言う。「そうだね、でもその前にマッサージに行こう」とオイルマッサージにやってきた。「個室はマッサージにならないよ」「ちょっとくらい揉んでくれるだろう」タイの個室マッサージは男の中心ばかり揉んでくる。本当のマッサージを受けようとしたら大部屋へ行かないとダメなのだ。
個室に入ると大柄な女性がやってきた。しばらく普通に揉んでからオイルマッサージが始まった。オイルを塗られ、ヌルヌルした手で撫でられる、これはまるでAVではないか。なんとも気持良い。彼女の太腿が渡しに太ももに押し付けられるのは気のせいだろう。張り切った弾力がたまらない。今度は胸が当たりだした。いけない立ってきた。

旅の教訓 オイルマッサージは気持ち良すぎた
それに気づいたのか、彼女はアルカイックスマイルを浮かべながら太腿に触ってくる。妖しい笑みと絶妙な手の動き、これはもうダメ・・・「いくら」彼女は指を二本立てる。私が頷くとあそこに手を添えて上下に動かしてくる。胸に手を伸ばしても抵抗はない、これもサービスに入っているようだ。彼女の手の動きは職人技だった。気持ち良すぎる。あっという間に花火は打ち上げられた。
終わったあとの一瞬の静寂に、若者なら賢者タイムというだろう、日本の風俗の女性たちの話を思い出した。「今日は何本抜いたの?」彼女たちは男を本数で数える。タイでも本数なのだろうか。彼女は発射の勢いに少し驚いたようだが、笑みを浮かべて後始末をしてくれた。これって本番より気持ちいいかもしれない。
象使いの教訓はどこへいったやら、そんな彼女にチップを忘れた私だった。次回は気をつけよう。
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