台北のホテルオークラの道を挟んで向かい側の角にMitaというパン屋さんがある。喫茶店が併設されていて、買ったパンを飲み物と一緒に食べられる。朝食時とあって店内は混んでいた。店の前にパンの写真と英式鬆餅、買2送1と書いた看板が立っている。

パン屋の角で赤いバラの花を貰う
はて英式鬆餅とはどんなパンだろう、買2送1とは何だろうとぼんやり考えていると「おはようございます」と日本語で声をかけられた。驚いて振り返ると、ドジャースの帽子を被った初老の男性が笑っている。
「観光ですか」「ハイ」「中にいるのは奥さんですか」私はコンビニで買った商品を抱えて彼女がパンを買うのを待っていた。「日本が懐かしい、学生の頃は早稲田に行っていた」と話は続く。最後に「あなたたちは本当に仲がよさそうだ。だからこれを差し上げる」と一本の紅いバラを差し出した。
このsituationはいったい何だろう。不思議な気持ちのまま「センキュー」「謝々」とお礼をいうと彼は「良い旅をしてください」と笑顔で去っていった。3月末の台北は温かい。

昨日も似たことがあった。MRT中山駅の地下に新しい書店街ができていた。前からあったかもしれないが記憶にない、そのあたりで方向が分からなくなってしまい、キョロキョロしていると「どこへ行くのですか」と声をかけられた。見ると台湾の人である。彼もまた流暢な日本語で道を教えてくれた。こちらはヤンキースの帽子だった。老人は日本でも台湾でも野球帽が好みらしい。
台湾の年配の人は日本語が上手で親切である。老人だけでなくみんなが親切で、それは単なる儀礼でなく心の中から出てくる感じがする。旅の醍醐味の一つに地元の人とのふれあいがある。夜の触れ合いをもっぱらとしているが朝のこのような出来事は嬉しい。今日は素晴らしい一日になりそうな予感がする。でもこのバラはどうしよう。

旅のお勧め 行く先に悩んだときは101ビルへ行こう
今回は真面目な昼の旅、となると悲しいかな、使えるのが半日となると何処へ行けばよいのか。九份十份は遠い、野柳や烏來も一日掛かりになる。故宮博物館は漢字ばかりで頭が痛くなる。仕方がないので有名な101ビルを頼ることにした。
MRT「台北101/世貿」という駅があるくらいなので行きやすい。ビルの地下に大きなスーパーマーケットとフードコートがある。女性は食事とスーパーが大好きだからぴったりだ。フードコートは広くて店の数が多い。台湾の伝統料理からお粥、タピオカティ、スィーツ、一風堂のラーメン、ミスタードーナッツまで何でも揃っている。その後タワーを観光すれば良い、これは良い考えだ。

旅のお勧め 101のフードコートへ行ってみよう
フードコートに無いのは水くらいだが、持参するか隣のスーパーで買えば良い。到着したのが昼食どきとあってテーブルはけっこう混んでいる。外国人観光客も台湾の人も実に楽しそうに料理を食べている。それにつられて餃子定食と肉巻き定食を食べることにした。
餃子定食は、5個セットと10個があり5個では寂しいだろう、と10個を頼んだが、この餃子の長さが王将サイズの3倍くらいある。肉巻きも太い。セットの酸辣湯は名前の通りとても酸っぱい。これは食べ切れるのか。ビールがあれば簡単だけど周囲に飲んでいる人がいない。
隣のちょっといかついおっちゃん達も水を飲んでいる。スーパーにはビールがあったので買えば飲めるが、禁酒かどうか分からないので止めておいた。ここは食べるのに専念する場所らしい。フードコート以外におなじみの鼎泰豊(ディンタイフォン)の店もある。台北へ来たら101のフードコートで一時を過ごすのも一考だろう。
彼女は「ドーナッツを買うの忘れた」と叫んでいる。ここまで来て、どうしてミスタードーナッツなのか。台北オリジナルがあったそうだ。ここにも買5送1があった。

展望台フロアーのガラス張りの床を楽しむ
腹ごしらえが終わって展望台へ向かう。展望台の料金はNT$600、円安を実感する。今日はアメリカの団体がいて、色んな人種の人たちとエレベーターに乗る。天井に映る銀河を見ていると88階まではあっと言う間だ。あまりに早いのでメーカーはどこかと見ると東芝だった。ちょっと誇らしい。
展望台からは台北の街が一望できる。ぐるっと一周すると、フロアの一画にガラス張りの場所があり、はるか下まで見え怖いとキャキャーと騒ぐようになっている。男は高い所から下を見るとあそこがむずむずする。女性にこの感覚はあるのだろうか。
ガラスの床は鏡のようにもなりスカートの中が映りそうだ。こちらもまたムズムズする。少し離れたガラス張りの床で、日本の女の子が高く足を上げるバレーのポーズで写真を撮っていた。SNSのネタなのだろうが大胆な姿だ。男が見ようとすれば怒るのに見せるのは平気なのか、女心は不可解である。
上の階の展望台は外に出られるのでガラス越しでない台北も見られる。

旅のお勧め 101の展望台フロアから手紙を出そう
展望台フロアにコーヒーと豆花のショップがある。入場券と一緒にそこの割引券をくれる。ただ注文の仕方が難しい。店員の早口な英語がまたわかりにくい。何度か繰り返した結果、豆花だけでは駄目で人形焼きみたいなのを一緒に頼まないといけないのだった。注文はわかりにくいが、人形焼きみたいなのも豆花も美味しい。豆花は乾いた喉に優しかった。
フロアにはポストがあり手紙が出せるようなっている。彼女はポストの周りを見て回っていたが、おもむろに近くの売店に入っていった。暫くすると烏龍茶のティーパックと葉書が一体になった物を買ってきた。きっと色んな葉書や切手を売店に売っているはずと思って探したら、予想通りにあったそうだ。さっそく何枚か書いて嬉しそうに投函している。

次は迪化街
101の次は迪化街へ向かう。MRTの淡水信義線で民権西路駅へ行き、中和新盧線に乗り換えて大橋頭駅へ着いた。長い地下道を通って地上に出ると、日本人はもとより観光客もいない、台湾ほんらいの街だった。大きな街路樹と古い建物は異国情緒満点だが不安も感じる。
由緒のありそうな二つの小学校の前を歩いていくと、やっと迪化街の道標が見えてきた。日本でも知られた餡子の店がある、観光客の姿を見るとホッとした。迪化街の散歩は次の機会に・・・
英式鬆餅、買2送1
英式鬆餅とはパンケーキ 買2送1は2個買うともう一個おまけが付いてくるだった。朝に貰ったバラの花は一旦ホテルへ戻ってミネラルウォーターのボトルに生けてきた。「誰々さんと誰々ちゃんに送ったの。台湾から送るって凄くない」101で送ったハガキの話である。妻は花の前でご満悦。そんなを聞いているのは悪くない。私も時に普通の旅をするのである。

101には何度も行ったが葉書や郵便グッズがあるのは知らなかった。女性というものは世の楽しみを見つけるのが男より格段に上手なのである。
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