桂南光が若い頃「初めて女性を知ったとき、こんなに柔らかくて気持ち良いものがあったのかと夢中になってしまった」とテレビ番組で語っていた。なるほどと頷いてしまった。「せっかくアッラーが許し給うた美味しいものを勝手に禁じてはいけない」ムハンマドは禁欲を主張する者をこのように諫めている。女性はつねに男を魅了する、それを認めないといけない。

20代の女と50代の男との事件
女性が犠牲になる痛ましい事件が起こった。タワーマンションに住む25歳の元クラブ経営者の女性が51歳の男に刺されて亡くなった。他人の人生を一方的に奪うことは決して許されない。男もそれは分かっていたはずなのに、何故そんなことをしたのか。男女の関係は藪の中だから本当の理由は分からない。最近若い女と年の離れた男の事件が多い。
2011年には大阪で、カラオケパブのオーナーの25歳の女性が58歳の常連客の男に襲われ命を落としている。こちらも50代という分別盛りの年頃である。いったい、どうしていい年をしたおっさんがこうなるのか。
たしかに別れのときの女の冷たさときたら例えようがない。お金の付き合いなら金の切れ目が縁の切れ目のときがやってくる。そのときの冷酷さは、恋愛の終わりの数倍、南極の冬の夜より厳しい。金があった頃に自分に向けられた笑顔、甘えた声、ベッドの上の乱れた姿、思いだしたら気が狂いそうになる。それでもいつか忘れるのが普通だ。

お金が無いので憂さ晴らしもできない
別れは辛い、憂さを晴らそうとしても金が無い。そもそも金が残っていれば別れていない。金がない身は若い娘どころか熟女も相手してくれない、自分がそんな年齢になっていたと気づいて呆然となる。一人で悶々としていると色んな妄想が湧いてくる。
彼女は今頃何をしてるのだろう、新しい彼氏に抱かれているのか、嫉妬の炎が燃え上がる。会いたいという狂おしい気持ちに苛まれる。彼女の目的がお金だと分かっていても、少しは好意があったと信じたい。
そんなとき男の脳は事実を変換する。もう一度だけ会えれば別れられる、彼女がお金を返してくれれば忘れる。もう一度だけ抱かれてくれたらきっぱりと別れる。会いたい気持ちを別れる条件に置き換える。だが会えば会いたい気持が強くなるだけだ。終わらないのである。

優しい女がこじらせる
ところが「もう一度だけ」男のこの言葉を信じる女がいる。心はとうに離れているのに優しさから会ってしまう。女神のようだがその優しさが不幸を生む。男は見込みがあると思ってしまうのだ。そんな優しい女でも会ったとき「あなたのことは嫌い」というオーラを出している。
会話に敬語が増え身体が触れるのを避ける。もちろん横に座ったりはしない。つい最近まで自分の腕に裸で抱かれていたじゃないか、なんでそんなに余所余所しい。もっと親しくできないのか。
あんなに金を使ったのに、思わず金を返せよと言ってしまう。金を返して欲しくて言ったのではない、以前のように接して欲しいだけだが、女は金額が大きいほど嫌になる。こんな男だったんだ。だいたいお金なんか使ってしまったし。

女が出す別れのオーラ
男の胸に一つ一つの仕草が突き刺さる。女が一旦このオーラを出したら決してもとには戻らない。金を使えば変わるかもしれないが無いからこうなっている。諦めるしかないのだが経験の乏しい男はそれが分からない。経験のないまま年をとった男なれば尚更だ。
女の別れのオーラは一度経験をしていれば理解できる。現代の男は経験が少ない。最近は20歳から28歳の男性のうち4割の人数が性体験がないそうだ。50代でも経験がない男はいる。性体験だけでなく恋愛経験のない男はもっといる。
女の心が男から離れるとこのオーラが出てくる。いつものように食事をしていても、ベッドで抱き合っていてさえも何か違うと感じる。女の分かれたい気持ちはコップに細い水が注がれるように溜まっていく。男は違和感を感じるがそれが何か分からない。溢れ出したとき女の心は完全に離れている。
愛が終わりに近づくと偶然も敵になる。恋の始まり、二人は偶然に街で出会うがそんな幸運は無くなる。約束をしても突然の出来事で会えなくなる。どうしてなんだと男は嘆くが、然はお互いが求めて初めて起きる。神様は片方だけが望むことに冷たい。男はようやく女が去ろうとしているのに気づくがもう遅い。
男は振られて初めて、違和感が女の別れたいオーラだったと理解する。次はオーラを察知して出たら諦めるしかないことを学ぶ。別れを経験して耐性がつく、女に対する免疫ができるのだ。その経験は金が無い若い頃が良い、金の執着が加わらないので悲劇になりにくい。未来の新しい恋愛に期待できるから立ち直りが早い。年を取るとそれが難しい。

男は振られて女の免疫を身につける
男は最初の恋愛にたいてい失敗する。初めて知る性行為の快楽に溺れてしまう。初めての恋愛期、精子工場はフル稼働しタンクは48時間で満杯になる。男の脳は快感と本能に支配され会うたびに女の身体を求める。やがて、女は猿には失礼だが「サルみたいにそればかりは嫌」と思う。
「私を愛しているのではなく身体が目的ではないのかしら」と疑いに変わる。愛を確かめるために拒否をする。男はその気持ちがわからない。この時期の男にとって愛と行為は同義語だ、拒否をされると不安なり愛を確かめようと更に求めてしまう。
男は愛のために求め、女は求められることで愛を疑う。やがて女は「そればかりは嫌なの、食事や遊びにも行きたかった」と他の男のもとへ去っていく。男は女が去ってようやくその気持ちに気づく。その経験をして初めて女の心を理解できる。若いときの恋愛は男にとって非常に重要なのだ。

男は火星人、女は金星人
心理学者ジョン・グレイによると、男と女は火星人と金星人くらいに異なるたしい。著書「一人になりたい男、話を聞いてほしい女」で詳しく説明している。男はテストステロン、女はエストロゲンに支配されるらしい。
古代から男と女の関係はお互いの異なる役割を担うものだった、文明が進化すると、役割分担から心の満足を求める関係へ変わる。役割分担から心の満足へ変わった現在、男と女が愛情が溢れる関係を築くためには、男女の生物学的な違いを受け入れながら、相手のニーズを理解することが重要になるそうだ。
グレイ博士は火星人と金星人の違いを面白く教えてくれる。男が女に感じる「なぜ」が見事に説明されている。恋や不倫に悩む人、女心が分からないと思う人に必読の書である。
だが男と女の本質は変わらない。女が微笑めば男は幸福になり冷たくされれば落ち込む。小さい頃から男女平等と教えられるが男と女は全く違う生き物である。昔の男はそれをよく理解して、女に負けないために法律や宗教を創り、女人禁制の場所をつくり、ときには暴力を使ってきた。しかし勝ったためしはない。

別れるのはお金にあるうちに
「シャンパン頼んでいい。久しぶりに来たから」甘い声が聞こえる。二人で食事を終えてやってきたニューハーフクラブである。ニューハーフだからお代も半額だ。助かったと思ったところにボトルの要求、財布が悲鳴を上げている。
「そうだね」内心を隠し笑顔で答える。彼女はワインリストの上から3番目くらいを見ている。そこらへんにしてください。「これにしよう」にっこりと笑われると「うん」と言ってしまう。女性にお金を使っていればこんな風に減っていく。それもあっという間に。
たいしてお金を持っていないからこの程度で済むが、大金があればもっと使う。ギャンブルは負け続けるのが快感になるらしい。女性にお金を使うのも似ているがこちらは勝ち目がない。若い時モテなかった初老の男がお金を抜きに女性の愛を勝ち取ることはできない。
金の切れ目が縁の切れ目の日はいつかやってくる。それを忘れてはいけない。memento mortisでなくmemento separationisである。中年以上の男が若い娘と付き合うとき、その日が来たらすっぱりと諦める覚悟を持たないといけないのだ。

そうとはいっても別れは辛い、甘えていてくれた女性と別れを宣告する女性が同じ人間とは思えない。男は一人だが、女は同じ容姿の人間が何人もいて入れ替わっているのではないだろうか。
コメント