「ここでは相手を選べるから楽、日本人は金払いがいいし優しいから好き」「それに日本人のは小さいから良いの」彼女の手が私のものにそっと触れる。「あまり大きいのは気持ち良くない」こんな殺し文句は初めてだが嬉しいのである。

興奮した女性は独特の匂いを放つ
寄り添いながらそんな話をしてくれるプロイちゃんは良い娘だった。アジアの風俗でキスはなかなか許してもらえないが彼女は違った。それだけでなくプロイちゃんの身体は良い匂いがする。甘い体臭だけでなく吐息も良い香りだ。金色銀色桃色吐息ではなく、ミント系の香りのする口を近づけながら、手を優しく動かしてくる。そんなことしたら「いいのかな、もう一回」「・・・」
興奮した女性の鼻から出る独特の匂い、それを何度か経験した。みんなプロでなかったので興奮していたのは間違いない。個人的体験だからデータ数としては非常に少ない。しかし確かに変ったのである。プロイちゃんの鼻からも良い匂いがしている、ひょっとしたら本当に興奮しているのかも、これは。

女性と香り
女性の匂いのエピソードで好きなのはゴルゴ13である。娼婦を装ったソビエトの女性諜報員に命を狙われたとき彼女の匂いで正体を見破る。「お前の付けている香水は生のままだ。本当の娼婦なら体臭と馴染んだ香りがするものだ」体臭と馴染んだ白人女性の匂いはきっと濃厚なんだろうな。
日本にも匂いの話がある。江戸時代の大田南畝という人がいた。その随筆「半日閑話」に「天女が降りて男に戯るる事」という項がある。ある日、松平藩の家臣、番味孫左衛門が昼寝をしていたら、天女が舞い降りてきて自分の口を吸った気がした。つまり天女がキスをしたのである。それ以来、口を開くとなんとも良い匂いが漂うようになった。天女のキスは羨ましいがおっさんの話だから色気はない。
それよりもフランスの話はエロスの香りが漂う。1816年、フランスの田舎にマリー・アンジュという17歳の少女がいた。彼女は色んな奇跡を起こすと評判だった。彼女は、キリストがキスをすると言い、受けると口からシロップをどくどくと吐き出した。更にキスが激しくなると、口の中からえんどう豆くらいの大きさボンボンがバラバラと溢れだすのである。それを見た人たちがそのシロップを舐めると甘く美味だった。
それはそうだろう、17歳の少女の口から溢れ出すシロップやボンボンが不味いはずがない。アダルトビデオでは女性に頼んで唾を垂らしてもらう。舌を絡め合い唾液の交換をするベロチュウも、女性が口から白い液体をドクドクだすシーンも興奮させる。古来から女性の口は性器を連想させ男を虜にしてきた。そんな唇がすぐ傍にありミントの香りが漂ってくる。プロイちゃんは優しく目を瞑った。

旅の教訓 プーケットはけっこう遠い
話は少し遡る。プーケットへは昨日やってきた。日本から直行便がなくてけっこう遠い。時間も8時間くらいかかる。バンコクや香港やクアラルンプールで乗り換えをしないといけない。バンコクからプーケットへの便は多い。そこで相談してバンコクに一泊することにした。そうすればバンコクでも一回夜遊びができる。
昨夜はバングラ通りで苦戦してみんな疲れてしまってまだ寝ている。私は一人でパトンビーチにやってきて海を眺めていた。写真を撮ってくれと頼まれた日本人のご夫婦と暫く話して、別れた後も海を見ている。
プーケットはリゾートという名にふさわしく豪華なホテルが立ち並んでいている。ヤシの木が植えられ色とりどりの花が咲き誇る庭園、透明な水を湛えるプール、水着の美女がデッキチェアに寝そべり、傍らのバーカウンターから届けられたカクテルを飲んでいる。
大きく盛り上がった胸にグラスの滴が落ちる。その谷間は深い。まさにリゾートの1シーンだけど、実際に見たことはない。砂浜のレジャーシートに寝そべる庶民のおっさんの妄想である。高級ホテルのプールで美女とカクテルを飲んでみたい、一度だけでも良い、がそんな夢は叶いそうにない。海で遊ぶ人を見ながら悲しくなってきた。

旅の教訓 庶民の楽しみと成功は雑踏の中にこそある
そんなとき、どこからともなく「I can go with you」と聞こえたような気がした。空耳かもしれないが昨夜出会った女の子の声だった。バングラ通りのバービアの値段は、店に1000バーツ、女の子に5000バーツくらいらしい、少し高いような気がするが彼女はその値打ちがあった。今夜だったら付き合ってくれるかもしれない。豪華な高級ホテルで過ごすのも良いが、食べ物や安い香水の匂いがごちゃまぜになった繁華街や嬌声が響く通りも良いものだ。そこなら何回も行ける。
米国の有名ブロガー、エリック・パーカは著書「残酷すぎる成功法則」で述べる、成功に必要なのは自分がどのような人間であるかを知り、どのような人間を目指したいのかを考え、そのバランスを調整することだ。それができれば大金持ちでなくても成功者である。成功者はやりたいことに夢中になっている。成功者は成功を意識しない、それはやりたいことに夢中になった結果なのだ。
そう考えると、私の望みはプールのデッキチェアで寝そべることではない。女性とベッドをともにしたいだけである。ベッドの上の性交、いやベッドの上が成功である。なにか違うような気もするが少し元気が出てきた。

旅の教訓 プーケット・タウンへは青いテンソウが安くて面白い
海から帰ると先ほど出会った村上夫妻のお勧めに従いプーケットタウンへ観光に行くことになった。「時間を節約するならタクシーですね、600バーツくらいかかるそうですけど」「時間を節約する必要がある?」当然ながら夜までしたいことがないので、時間を節約する必要はない。「それではテンソウで行きましょう」「乗り合いバスだね、大丈夫」「青いのに乗ればOKです。運転手に行き先を確認したら間違いないでしょう」
それでは行こう行こうとなった。バス停はネットの地図ですぐわかる。本数は一時間に3本くらいあり料金も40バーツとたいへんに安い。おっさんが4人ボーッと待っていたら青いトラックがやってきた。乗り込んでお金を払おうとしたら手を振って後でと言う、とりあえずベンチのような座席に座っていたら運転手が回収にきた。向こうの都合で集めるシステムらしい。
青いテンソウは快調というよりゆっくり走る、渋滞もあって50分ほどかかってプーケット・タウンについた。オールドタウンは、パステルカラーのシノポルトガル様式の建物が立ち並び、女性に人気のインスタスポットであるのが分かる。恋愛運に効くと言うワット・プッジョーなどのお寺も面白かったが行ったメンバーが良くなかった。興味がないのである。それよりこのオールドタウンにマッサージ店が沢山あるのではないか、ちょっと行ってみますかと盛り上がったがバスの最終が近づいていた。
このテンソウ、オープンエアだけれど天井に扇風機がついているで暑くない。途中、タイガーキングダムやアクアリア・プーケットという水族館に寄って行く。そこへ行くのにも安上がりだ。窓といってももともと窓がなく開けっ放しだが、そこから見える景色が良いのである。タイへ来ていると実感できるのだ。値段が安く旅行情緒を満喫できる、いうことなしだ。「これは良いですね」「旅ですな」とおっさんたちはテルマエロマエの登場人物が風呂に浸かった時のような顔になるのだった。
本当の目的地はシードラゴン通り

そんな風にテンソウの旅を終えてホテルへ戻った。私達の本番はこれからだ。少し離れたナイトマーケットへ行き夕食を取って、再びパトンビーチに戻りバングラ通りに向かう予定だ。目指すのはシードラゴン通り、そこに美女が待っているのか、はたまたレディボーイか。期待は膨らむばかりだ。昨夜の彼女に会えるのか、そしてつきあってくれるのだろうか。この時点ではまだ分からない。(続く)
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