「日本人、女遊びをしたいのか。それなら俺に任せろ」タクシーの運転手のおっちゃんが割り込んできた。風俗はポン引きに付いていって良いことはない。しかしどこの国でも運転手の情報は貴重だ。おっちゃんはやる気満々で売り込みをかけてくる。「どうしましょう」「乗っても良いかも」と心が傾いたがまだホテルのチェックインもすませていない。
「ノーサンキュー、とりあえずホテルへ行ってくれ」「そうか、欲しくなったらここに電話しろ」と名刺より小さい紙を渡してくる。このおっちゃんたちは少々ではめげない。日本人はこの押しの強さを見習うべきだろう。政治でも経済でも夜の街でも。「役にたちますかね」「立たないことを祈りましょう」

旅の教訓 ナイトマーケット Sugbo Mercadoは悪くない
ホテルについて一休みしてから夕食を取りにナイトマーケットへ向かう。少し離れたITパーク内にSugbo Mercado(スグボメルカド)という有名なところがある。ITパークはフィリピン内外のIT企業が集まるオフィス街らしい。
ホテルからタクシーで直ぐのはずだったが思ったより渋滞がひどく40分以上かかってしまった。近づくにつれて高層ビルが建つ近代都市になり、リゾートの雰囲気が無くなっていく。こんなところにほんとうに屋台村があるの、で着いたら本当にありました。
ビルの谷間の芝生広場に屋台が出ている。なんとなく日本のイベント会場に似ている。それもそのはず、木曜日から日曜日までの期間営業だそうだ、だから似た雰囲気になるのだろう。夜の八時くらい着いたら地元の人や観光客で既に一杯である。屋台や座席は清潔で分別回収のゴミ箱もある。「Clean as you go 」の看板が至る所にある。「清潔で行こう」くらいかな。
ざっと店を見て回ってからテーブルを確保して小瓶のビールで乾杯をする乾いた喉にビールが染み渡る。席に残る者と買い出しに行く者に別れて屋台に向かう。果物やスィーツの店が充実している。若い日本の娘さんたちがマンゴージュースやアイアスクリームを片手に笑いながら通り過ぎて行く。外国の若い娘も多い。
彼女たちが去った後は良い匂いが残った。通りすぎたらその後に花の香りが残るよな、そんな娘になりたいと・・・我ながら古いが小柳ルミ子の歌を思い出す。「いい匂いですね、でも彼女たちの視界に僕らは入っていないですね」
「そうだね、僕らの視界にはしっかり入ってるんだけどね」若い娘にとってオヤジは「Clean as you go 」の看板くらいの存在なのである。分かっていても少し悲しい。暫くの沈黙「だから相手をしてくれる若い娘を探しに来てるのでしょ」そうだった。

旅の教訓 レチョンはまぁまぁイカは美味いぞ ラーメンもある
少し元気になって飲むのを再開する。テーブルに並んでいるのは、フィリピンの伝統料理レチョン、バーベキュー色々、シシグ、海鮮の盛り合わせである。どうみても量が多いが安いから買ってしまった。
レチョンは何軒もの店が出ている名物の豚の丸焼きである。豚のお腹に醤油やスパイスで味付した野菜を詰め込んで炭火で丸焼きにする。その焼いた皮と肉を濃い目のソースで食べる。こんがりした皮はパリパリしていて、ちょっと分厚いが北京ダックの豚版である。肉は野菜から味が移っているのでソースがなくても食べられる。
むしろ酸っぱいソースは無い方がよいかもしれない。レチョンの味は微妙である。日本人とフィリピン人の好みの違いかもしれない。お値段ははかり売りで250gで250ペソ(650円)くらい。お腹を満たす(ご飯とスープのセットがある)のに丁度良い。ともかく一度は食べる価値があるとみた。
バーベキューは肉や魚、野菜などいろいろある。一本30ペソ(79円)から100ペソ(262円)くらいとこれまた安い。盛り合わせセットは、エビやカニ、貝、イカ、トウモロコシがはいって399ペソ(1045円)だった。これをビニール手袋をはめて手で食べる。ウェットティッシュがあれば良いが持ってるような気の利いたおっさんはいなかった。
海鮮のなかでもイカが美味かった。剣先イカやスルメイカでなく、身の厚い紋甲イカや甲イカ(たぶん)が並んでいる。「No sauce, salt only、No sauce, salt only」と叫んだら、気の良いおばちゃんが「It’s special、you different ahaha」と笑って焼いてくれた。これが美味い、塩が分厚い身に合う。言ってみるもんだ。

シシグでしめて、マンゴーストリートへ向かう
シメはシシグである。豚の色んな部分を醤油や酢、唐辛子で味付けして、玉ねぎやにんにくと一緒に炒めたものだ。醤油味がご飯によく合うのである。ここでは中くらいのカップが100ペソ(262円)だった。全てがこれくらいの値段だから若い人は嬉しいだろう。さらにラーメンやステーキ、タイ料理、ピザ店もあって楽しめる。
Sugbo Mercado(スグボメルカド)はローカル感は弱いが私達のようなセブ島初心者にはぴったりだった。悪くない、満足感とともに酔いが回ってくる。酔いはビールのせいである。いつはサンミゲールだが今夜はホワイトホースを頼んだ。このビールはアルコール度数が6.9%もある。美味いけど酔いに注意だ。
さて腹が膨れ酔いも回った。衣食住足りて礼節を知る、腹くちて性欲を覚える。「どうしますか」「とりあえずマンゴーストリートへいってみましょうか」そうだねで、男たちはぞろぞろと立ち上がる。出発の前に「Clean as you go」 看板に笑われないようにしないとね。
マンゴーストリートは、正式にはGeneral Maxilom Aveという。タクシーの運転手にそう言わないと通じないと言う話もあったが今回は通じた。マンゴーと日本人が組み合わせられると自ずから行きたい所が決まるのかもしれない。マンゴーストリートは昔はマンゴー畑の道だったそうだ。たくさんの熟れた実がいい香りが漂わせていたのだろう。今はたわわに実った別の身が、いい匂いを放って男を引き付けている。さぁ出発だ。

旅の教訓 ストリートチルドレンに関わっては絶対にいけない
マンゴーストリートは、ソイカウボーイやウォーキングストリートと違い、広い通り真ん中に車が走っている。店は両側の歩道や通りから少し離れたところにある。やはりフィリピンはフィリピン、治安はあまり良くない感じがする。歩いているとみなりの良くない子供が寄ってきた。
これが噂のストリートチルドレンか、関わってはいけないと早足になるが敵もさるものでしつこい。一人がポケットから5ペソを出して追い払おうとした。それが大間違いであっと言う間に仲間がやってくる。公園の鳩に餌をやったときと同じである。次々とやってくるのだ。これは困ったぞと思ったら潮が引くように去っていく。次の獲物を見つけたのかな。そうでは無かった。
「参りましたね」「やっぱり鉄則は守らないといけない」「でもどうして帰っていったのかな」ベトナムのホンダーガールに財布を抜かれたことを思い出す。彼女も笑顔で去っていった。「財布がない」お金を与えた男が言い出した。「どこに入れていたの」「お尻のポケットに入れたと思うんだけど」「なんでそんなとこへいれるんや」屋台で支払いをした時にいつもの癖で入れてしまったようだ。
「いくら入れてたの」「1000ペソくらい、他のお金とカードは前のポケットに入れてる。まぁしれてるけど腹立つなぁ」固まって話す私たちのそばを、多くの女性が笑いながら通り過ぎていく。「あの日本人、お金をすられのに違いないわ」「ボーッとした顔してるもんね」「私が相手してやろうかしら」と言っている気がする。
「あの子供たちですかね」「多分」子供を捕まえたら路地から怖いお兄さんがでてくるに違いない。やられ損である。出だしから手厳しい洗礼を受けてしまった。外国でセオリーを無視すると確実にやられるのだ。

旅の教訓 呼び込みは強烈 料金の確認は絶対にしないといけない
「今夜はついてなさそうだから注意したほうが良さそうですね」「だね」店は看板はあるがドアが閉まっているから中の様子がわからない。「ネットで調べた店に行くのが無難みたいですね」「ここもそうですかね」と言ってたら聞こえていたようにドアが開いておっちゃんが飛び出してきた。「いらっしゃい」日本語である。ママも出てくる「一杯だけ飲んでけ」と小太りのママ、「持ち帰りもできるよ」とおっちゃん。
さっき痛い目にあったので慎重になる。「ハウマッチ」「エントランス100ペソ、ドリンク100レ、ディース300ペソ」エントランスってなんじゃい。チャージみたいなものか。「バーファイン3500ペソだ」「嘘じゃないよね」「トラストミー、ここ日本人良く来る。女の子日本語はなせる」そのうちに女の子も出てきて腕を掴まれるやら胸を押し付けられるやらで入ってしまった。これはボラれるかも。

マンゴーストリートは強烈だった
横に座った女性はマリアちゃんという。日本語も上手だ。フィリピン娘の明るさと押しの強さは強烈だ。固太りの身体を密着させてくる。「飲み物いいですか」「ママもいいですか」マリアちゃん、バーファインはいくらとやる気満々である。ホテルはどうするのと聞くと部屋にいっても良いしモーテルもあるという。モーテルは近くにあって3時間で270ペソくらいらしい。

「それとも、ここでやるか」「えっ」「冗談だよ、アハハ」みんな身体を押し付けられている。小さい手があそこに伸びている。安っぽい香水が鼻腔をくすぐる。マリアちゃんは膝に跨って弾力あるお尻をグリグリとこすりつける。さきほど失敗して落ち込んだテンションがイッキにあがる。この感じはフィリピンならでは、理性は簡単に崩壊した。悪くない、悪くないけどぼったくられないよね。
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