日本 蒲田の人情ピンクサロン

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「ずいぶん毒が溜まっているようだね、このおばさんが楽にしてあげるよ」精霊の守り人で、トロガイが戦いで弱っているバルサに言えば文字通りの意味である。そして治療を心配する。しかし、これがAVの台詞だったら全く別の意味になる。その治療風景に興奮する。

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男は溜まりすぎると馬鹿なことをする

男はこの毒を自らの体の奥で作り出す。その物質はもともと神聖なものだが溜まりすぎると毒に変化する。男は、毒がまわると知らない女性のお尻を触ったり盗撮をしたりと馬鹿な事をしてしまう。最近も禅宗の大本山の修行僧が女子高校生の身体を触ってしまった。

人間にはそれを防ぐための安全弁が付いている。溜まった圧力を逃すために自慰をする。それにスポーツや芸術がある。若い頃はこれらに打ち込みカタルシスを得る。ただ20歳の後半を越える頃からスポーツの回数が減ってしまう。結婚適齢期になると自慰だけでは満足できなくなる。

それが大人が痴漢や盗撮をする理由である。自慰は大人になってもするがいつしか自分の手でなく他人の手が恋しくなる。右手を左手に代えても満足できない。友人の男の手では尚いけない。白くて柔らかくて白魚に例えられる手がいる。それを多くの男が求める、需要の発生である。需要があれば供給が生まれる。風俗業の誕生である。ケインズ経済だ。

アテネの神殿で最初に生まれたと言われるこの職業の歴史は古い。ピンクサロンもその一つの形態である。昭和に全盛期を迎えその後衰退傾向にあるもののしぶとく生き残っている。蒲田はピンサロのメッカで今も数軒の店が存在する。そこは溜まった毒を放出する場であるが、ときに手の触れ合いや局部の触れ合い以上のものが生まれる。ちょっといい話というやつである。

蒲田は庶民の街である

JR蒲田から京急蒲田の間の通りにたくさんの飲食店がある。今はもう無くなったようだが、さくら水産という居酒屋があった。そこの昼に500円のお刺身定食があった。新鮮なお刺身に加えて、ご飯、卵、味付け海苔、味噌汁が食べ放題という信じられないようなメニューである。その他にも天下一品や羽つき餃子の店があり、昼飯を取るのに良く立ち寄った。

蒲田に行くのは昼だけではない。夜は空腹を満たすだけでなく溜まったものを吐き出しに行くのだ。三井ガーデンホテルの近くに馴染みのピンサロがあった。階段をおりて薄暗い店内に入ると「いらっしゃいませ、いらっしゃいませ、何番さんご案内」マネジャーの店内放送が流れる。暫くすると女性が小さな籠を持ってやってくる。その中にはおしぼりやローションや色んなものが入っている。熟女しかいないのを知っているので彼女を見ても動揺はない。

「あら、かもさんいらっしゃい。お久しぶりね」馴染みの顔である。女性の数が少ないのですぐ馴染みになる。仮にマキさんとしよう。「こんばんは、またよろしくお願い」「どうしてたの」「なかなかこちらに用事がなくて」彼女の手がズボンの上から敏感なところを撫でてくる。これが誠に気持ち良い。

「良かった。よく来てる人が来ないと心配になるわ」「そんなものかな」「そう、最近よく来ていたおじいちゃんが急に来なくなったのよね」話しつつも彼女の手は止まらない。「85に成るって言ってたわね。毎週来てたのよ。来たら2セット使ってくれて」「あそこは元気だった」「さすがにあまり硬くならないんだけど、触ってくれるだけで良いよって、やさしいのよ」

私の物の形が分かるようになったのを確認するとベルトに手をかける。こちらも腰を浮かしてスラックスを下ろす。「小瓶のビールを一本だけ飲んで、みんなに飲み物を奢って、おっぱいやアソコを触ってニコニコしてるのよ」おしぼりが取り出される。日常会話をしながらこの作業、さすがプロだけどもう少し雰囲気が。こういう年寄の話の結末はたいてい悲劇である。

突然来なくなったおじいちゃん

「そうか、残念だったね」生活感のある手に包まれながら、おじいさんを悼むのはなんだかである。「あら、いやだ。変なこと考えてる。でも私たちも同じ事を考えたの」何故か手の動きが早くなる。「女の子はみんなおじいちゃんのことが好きだったから、店がしんみりしちゃったのね」

それを見たマネージャーが、これではいけない、ここはお通夜の場所ではないと思ったのか。どういうツテを辿ったかわからないが、おじいちゃんの家の電話番号を見つけてきて電話をしたそうだ。動かす手に力が入る。こちらも思わず体に力が入る。「あら、ごめんなさい」「大丈夫、それよりおじいさんどうなった」「それがさ、笑っちゃうのよ」と手を放して私の肩を叩く。どうして熟女は笑うと叩くのだろう。

「おじいちゃんたら入院してただけだったの、骨折で」奥さんの話だと、その日も蒲田へ行くんだと張り切っていたらしい。山梨の友人から桃が届いたので行きつけの店へもって行くとご機嫌だったそうだ。「馬鹿だよこの人は、わざわざ飲み屋に持って行くなんて。孫にでもやればいいのに」「ほっとけ、お前と孫の分は置いてあるよ」めげないのである。

ところが持ちなれない桃をを持って、靴を履こうとしたらバランスを崩してスッテンコロリン、大腿骨骨折となった。救急車の中でも「店のみんなに食わしてやりたかったんだがな」「私が届けようか」おじいちゃんは急に慌てて「それにゃ及ばないよ」と黙ってしまった。それはそうだ、奥さんにピンサロへ届けてもらうのは無理だろう。

「馬鹿だねぇおじいちゃん、こんな私たちの為に怪我をしたのよ」また手に力が入る。「馬鹿だよ、ほんと」マキさんの瞳が潤んでいるように見えるのは照明のせいか。「それでまだ入院したはるの」「そう、年取っての骨折は治りが遅いのね」そこで一旦話が途切れた。口に何かを頬張って喋るのは行儀が悪いのである。

ピンクサロンのちょっといい話

女性たちはマネージャーの話を聞いて安心した。その日の彼女たちのサービスは過激だったそうだ。そして次の日、一番若いリサさん(仮名)がお見舞いに行こうと言い出した。マネージャーは渋っていたが、みんなの熱意に負けてマキさんを代表に4人で行くことになる。

「おじいちゃん退屈しているよねきっと。お土産は私のおっぱいだね。触らしてあげようかな」若いリサさんがはしゃく。「みんな地味な服で行こうね」とマキさん。賑やかな一行は病院へ着いたが奥さんがいたら流石に不味いだろう。「マネージャー見てきて」ロビーで待っていると携帯がなって大丈夫のメールが届く。

個室に行くとギブスつけたおじいちゃんが半身を起こしてマネージャーと話している。みんなが入ると満面の笑みを浮かべて「良くきてくれたね。さぁさ、入っておくんねぇ」鬼平になっている。「心配しましたよ」「早く行こうと焦ってなぁ」「そんなお気持ちだけで充分でござんす」

「リサちゃんなんか馬鹿だから、スカートをまくっておじいちゃんの手を入れたりするのね、おじいちゃんは喜んじゃって」「これでなくっちゃいけない、リサが毎日きてくれたら骨折なんざ直ぐ治っちまう、マネジャー、料金は払うから出張を頼みますよ」「病院での営業なんて、聞いたことないな」馬鹿な話をしていたらドアがノックされて入ってきたのは奥さんだった。みんなが凍りつく。

年は取っているが小股の切れ上がった良い女である。昔はさぞ美人だったのだろう「あんた、賑やかそうでよろしいねぇ」おじいちゃんをひと睨みしてから「みなさん、こんな爺さんの見舞いに来て頂いてすみませんねぇ」深々とお辞儀をする。女の子もマネージャーも恐縮して「こちらこそいつもお世話になってます」声が上ずっている。

「突然来られなくなったから心配になって、こちらこそ大勢で押しかけてすみません」「いいんですよ、色ボケじいさんだから、女の臭いがないと機嫌が悪くて」「当たり前だろう、ばあさんの尻を触って楽しい訳がねぇだろう」

男の魂100歳まで

「お元気そうでよかった」「当たり前ですよ、こんな兵六玉が死ぬもんかね、それより皆さん、ジジイのお世話をして貰ってありがとうね。昔から女癖が悪かったから迷惑かけませんでしたかね。役に立たないくせに」全てお見通しのようだった。「今後も宜しくお願いします」うちの店がピンサロって知っているのだろうか。それから暫くおじいちゃんの武勇伝を聞いて帰ったそうだ。奥さんのきっぷの良い事、この妻あって夫ありと思ったそうだ。

「何番さん、そろそろお時間で~す」「あら、ごめんなさい、時間が来ちゃった」マキさん、いつの間にか口を放して話に戻っていた。当時は40分5000円だった。今は30分6000円くらいらしい。「どうしようかな、今日はいい話を聞いたのでこれで帰ろうかな」「そう残念、でもまだ5分あるから」猛然と手が動き出す。どうしてこんなに男のツボが分かるのだろう、あっ。「ごめんね、今度来てくれたらもっとサービスするわ」お絞りで後始末をしながら耳元でささやいた。

マキさんの声に送られて外にでると、蒲田の街はとっぷり日がくれて看板の灯りが賑やかい。うまそうな料理の匂いが漂い人の笑い声が聞こえてくる。この街はいい。こんな都会の片隅だけど色んな人生があるのだ。何か人が好きになる夜だった。話のおじいちゃんみたいに年をとりたいものである。

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