カンボジア シェリムアップ アプサラたちの夜

カンボジア

男と女の間には暗くて深い河がある、誰も渡れぬ河なれど、と歌っている場合ではない。日本語も英語も通じないクメール語はもとより分からない。二人きりで部屋に入ると言葉の壁は思った以上に大きかった。彼女はクメールの微笑みというよりただニコニコして座っている。アプラサのような美人ではないが小柄で下膨れの可愛い娘だ。キッカケはどうしよう、シャワーのジェスチャーをする自分がおかしい。

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プノンペンかシェリムアップか、それが問題だ

「えーっ、それだったらプノンペンで遊べないじゃないですか」「アンコールワットってプノンペンの近くじゃないの」「プノンペンで遊べないのだったら行く意味ないじゃないですか」ZOOM会議が紛糾してきた。いつもの東南アジア旅行の打ち合わせである。今回は真面目なメンバーが中心なのでアンコールワットとトムは外せないのである。

それに夜にしか興味がないメンバーが文句を言っている。不満なら別々に行けば良いのだが事情があってそうもいかない。夜の愛好者も、メンバーに健全な人物が入っていないと、家族から何を目的に行くのか疑われる。だからたまにはこの構成が必要なのだ。たいていの場合、観光は昼、夜遊びは夜と棲み分けができるのだが今回は都市が問題だった。

私も恥ずかしながらアンコールワットはプノンペンの近くにあると思っていた。調べると遺跡はプノンペンでなくシェムリアップという都市にある。シェムリアップはプノンペンから飛行機で1時間くらいの距離にある。カンボジアは日本からの直行便がなく結構時間がかかるのだ。

クメール女性は小柄である

ホーチミンへ行って一泊して夜遊び、翌日プノンペンへ移動して一泊、翌日アンコールを見学して遅い便で帰国する、のが夜遊び組の腹づもりだった。アンコール観光はシェムリアップに一泊するのが便利なので意見がまとまらなくなった。観光をするならシェムリアップ、夜遊びするためのプノンペンと議論は続くのだった。

「かもさん、いつもだったら夜遊びでも観光でもどっちでもいい態度なのに、今回は熱心な夜遊び派ですね。どうしたの」「知ってるクメールの女性って小柄なんだよ」「東南アジアの女性ってけっこう小柄ですよね」「それでね、アソコがすごく小さいらしいのよ」「へぇ、それはいいですね」

「感動が少ないね。それがほんとうなら僕も巨根になるんだよ、大きくて入らないなんて言われたりして・・・ウププ」「入らなければ意味ないじゃないですか」「日頃のコンプレックスから開放されるんだ、ハバロフスクの時ような恐怖から開放されるんだ」「でも、かもさんのが大きくなるわけではないでしょ」巨根の持ち主はどこまでいっても浪漫がない。

結局ベトナムを諦めて、プノンペンに一泊して観光をしてからシェムリアップに移動して一泊、アンコールの朝日を見て観光して一泊することになった。一泊増えたのでアプサラダンスが鑑賞できることになった。その後は自由行動である。女性が踊るダンス見学は全員賛成だが問題は時間だった。食事をして公演が終わると夜の9時くらいになる。「そんなに遅くなったら、可愛い娘が残っていないかもしれないですよ」「ええかげんにしなさい」

カンボジアは立憲君主制である

カンボジアはインドシナ半島の南部にある立憲君主制の王国である。王様はノドロム家とシソワット家から王室評議会によって選ばれる。王室評議会は、首相、両院の議長、両院の副議長、上座部仏教の2つの宗派の代表によって選ばれる。仏教も国政に影響を持つのである。

悪評高いポルポト派による国民の大虐殺の後に国王に選ばれたのは、当時有名なシアヌーク殿下だった。人口は約1700万、国民の90%がクメール人で占められるクメール王国である。カンボジアの呼び名はアンコール王朝時代からで、聖者カンブ・スヴァーヤンブヴァと天女メラーの婚姻によってカンボジアが始まったことに由来する。カンブの子孫の国だからカンブチャ、カンボジアである。二人の結婚はアプサラダンスの演目にもなっている。

国土は、南はタイランド湾に面し、西はタイ、北はラオス、東はベトナムに接し、中央を有名な大河メコン川が流れている。メコン川と言えばタイのバンコクを流れているとお思いの方もいるかもしれないがあちらはチャオプラヤ川である。メコン川の上流にはトンレサップ湖という大きな湖がある。9世紀頃その周辺にアンコール王朝が起こり、12世紀~13世紀に隆盛を極めアンコール遺跡が築かれた。

旅のお勧め アプサラダンスは艶やか

国名も遺跡も川の名前も日本では有名であるが、お隣のタイやベトナムに比べると以外と行かない国かもしれない。今回はそこを目指す旅である。行程を決めるのは紛糾したが、旅はプノンペン観光、アンコールと周辺遺跡観光と順調に進みアプサラダンスの夜がやってきた。

プノンペンではポルポトによる虐殺の凄惨さに打ちのめされた。アンコールワットの壮大さとアンコールトムは素晴らしかった。バイヨンのクメールの微笑みは三島由紀夫の戯曲ライ王のテラスを思い出す。遺跡の各所に刻まれたアプサラの姿は宗教遺跡とは思えない艶やかさがある。

ヒンズー彫刻の女性はエロスに満ちている。丸い乳房、引き締まった胴、大きく張った腰は篠崎愛の上位互換だ。街で見かける女性たちとちょっと異なるのは、アプサラのモデルがボリウッド映画で踊るインド女優のご先祖様だからだろう。夜のアプサラダンスが楽しみだとしげしげと眺めていたら見すぎと笑われてしまった。

シェリムアップにはアプサラダンスを楽しめる店がたくさんある。今回行ったのはクーレンという大きな店だった(クーレンは現在休止だそう)料理はブッフェスタイルでショーが始まる頃にはけっこう出来上がってしまう。ガイドさんの腕が良かったのか席は前の方だった。ダンサーが良く見える。

ショーはカンボジアの伝統楽器の演奏で始まった。木琴の高い音がエスニック感を高める。ダンサーがバイヨンを背景にした舞台に登場すると客席がどよめく。きらびやかな衣装と優雅な動き、大きな被り物が重そうである。小柄な体に丸い胸、下膨れの顔は意外と彫りが深い。これがクメール美人なのだと見とれてしまう。

踊りは演奏と合唱に合わせて始まる。ダンサーはゆっくりと優雅なポーズをとっていく。腕や手が滑らかに動き、指が柔らかく反ったり曲がったりする。手の動きは4000以上の型があるそうだ。ときに膝を軽く曲げ片足を後ろに90度くらい上げる。アプサラダンスの特徴的なポーズになる。

腰の丸みが協調され上げられた足の指が反り返える。これって女性がいくときの指の形ではないか。一度妄想に火がつくと止まらない。あんな柔らかそうな指で触られたらどうなるのだろう。アプサラダンスはなかなか官能的である。このショーが12ドルとは安い。

旅の教訓 シェムリアップにもKTVはある

演目の一つココナッツダンスは若い男女の交流を描く明るく健康的な踊りだった。ここで妄想から解放され周りを見ると、夜のメンバーの顔に「この後、怪しい店に行かねばならない」というなみなみならぬ決意が浮かんでいた。欲求に満ちた男は悍馬のごとくだが、一度ホテルへ帰りガイドの案内でKTVへ向かう。

「日本語や英語はあまり通じないです、歌も日本の曲は少ないですよ」「そんなの関係ないよ、気にしないで」「歌わなくても大丈夫ですよ」「?」シェリムアップは良く知られているKTVが数軒あるが、中心のパブストリートから離れているらしい。トゥクトゥク2台に乗って出発である。ガイドがいなくても1〜2ドルくらいで連れて行ってくれるそうだ。「きれいな娘が残っていますかね」「まだ大丈夫でしょう」

店の入り口に十数人の女性たちがいる。「Japanese?」首をブンブン振ると笑いが起こった。これはなかなか良い雰囲気だった。ガイドがスタッフと話している。「カラオケしますか、直ぐに帰りますか」カラオケを歌わなくてもいいらしい。希望すればここでもできるそうでピンサロの機能もあるのだった。とりあえず部屋に入ると女の子がたくさんやってきた。

「どうします」「どうしよう」お互い顔を見合わす。けっこう飲んでいるしお腹も膨れている。何より血液が下半身に集まっている。「帰りましょうか」女子を選んで帰ることになった。アプサラのような美人は居ないがみんな若くてそこそこだった。私は小柄(みんな小さいのだが)で髪の長い娘を指名した。

旅の教訓 彼女たちは英語も日本語も話せない。

ただカラオケをしていないので、彼女たちが英語や日本語をどれくらい話せるかが分からない。それに気が付かなかった。かかる費用はペイバー10ドル、ショート60ドル(現在は70ドルくらいするらしい)後でチップ10ドルくらいだった。店を出るとガイドとトゥクトゥクが待っていた。よく分かってらっしゃる。

トゥクトゥクの中で彼女に話かけるのだがやはり全く言葉が通じない。「日本語わからない」運転手が口を出してくる。言われなくても分かりますよ。「かもさん」自分を指さしながら繰り返す。彼女は笑顔で自分を指さし「ソフィア」ロシア人だったのか。「かもさん」「ソフィア」これでは猿の惑星である。

ジョイナーフィーの記憶はないが20ドルくらいを取られるホテルもあるそうだ。部屋に入っても猿の惑星状態である。彼女はそれが可笑しいのか時々笑う。さてきっかけをどうするか、今度はシャワーのジェスチャーゲームだ。すぐにわかったのか手を引いてくれて浴室へ向かう。これは一緒に入ってくれるのか。私のものは既に固くなっていた。

アプサラとの夜

彼女はシャワーのお湯を調整しながら既に大きくなったものを見つめてにっこりと笑う。瞳に安堵の色が浮かんでいる。その目は「良かった。この大きさなら大丈夫」と雄弁に語っている。カンボジアで巨根伝説をつくる夢がもろくも崩れた一瞬だった。「でも、かもさんのが大きくなるわけではないでしょう」シャワーの向こうから声が聞こえてくるようだ。

少し元気がなくなった私を怪訝そうに見て、そっと手を伸ばして細い指で包んでくれる。柔らかい。大きいばかりが良いのではない、彼女はこうして喜んでいる。「たった一人でも良い、自分を愛してくれる人がいれば頑張れる」サラリーマン金太郎にニューハーフになった暴走族仲間が言った言葉である。

「たった一人の女性でいい、喜んでくれる人がいれば」小さくても頑張れる。少々負け惜しみの気もするが彼女のアソコはたしかに小さくて巨根の気分を味わえた。こんな世界があったのか。教えてくれた彼女は言葉が通じないのでニコニコして寄り添っている。アプサラはアンコールワットやステージに居るだけでなく街にもいた。素晴らしい観光地と女性たち、シェムリアップに乾杯。

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