タイ バンコクに住み着いた男と復活したマッサージ・パーラー

タイ

「あれ、長澤さん(仮名)どうしたんですか、おひさしぶりですね」「かも君こそ、どうしたの」「ちょっと、休暇でといっても毎日休暇みたいなもんですけどね」「会社は辞めたんだって」「早期退職しました」「いいねぇ、でも頭が白くなったね」

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メイドに全財産を盗られた男

スクンピッド駅に近いホテルで懐かしい顔に出会った。会社員時代に何度か一緒に仕事をした先輩である。本社を退職したあとタイの関連会社に天下ってバンコクで暮らしていた。その任期が終わると全く関係の無い会社に就職してタイに住んでいる。噂は聞いていたがここで出会うとは、驚きの偶然である。

そういう彼もずいぶん年を取っている。南国の強い太陽は肌の老化を速めるのだろうか。見直すと彼のシャツの胸のところがなんだか膨らんでいる。シャツの下に大きな首飾りをかけているようだ。「何をぶら下げているんですか」「俺の全財産だよ」ジャラジャラと取り出した首飾りに財布やパスポートケース、巾着みたいなものが着いている。

「なんで、そんなことをしてるんですか」「家に置いていた財産をすっかり盗まれたからだよ」「泥棒ですか」「メイドだよ、会社を変わっても同じ家に住んで同じ女性に頼んでたんだ。変わってから何日かして家に帰るとなんだか様子がおかしい。メイドが居ないんだ。部屋に入って吃驚したねぇ。金目のものが全部無いんだ。」

「ゴルフの優勝カップに入れていた小銭や日本の円まで根こそぎやられしまった」「驚いたでしょう」「話には聞いてたけど自分があうとは思わなかった。パスポートと財布は持っていたから良かったけど、けっこうな額のお金を置いていたから痛かったよ」「有るんですねぇ」「そうだね、長い間働いてくれた良い娘だったんだけどね」

会社を変わって収入が減るので彼女の給料を下げたのが原因らしい。「給料が下がって不安になったんですかね」「そうかもしれないけど、根こそぎはねぇ」「綺麗な女性でした」「それほどでもなかったけど、気立ての良い娘だったんだ」ただ言葉に恨む様子がなく未練たらたらである。今は新しいメイドに来てもらっているが、心配なので財産全部を持っているそうだ。大金を持って街を歩くのは返って危ない気がするが。

タイの女性は怒らすと怖いぞ

「おっ、かもちゃんじゃないか、珍しいね」小柄でよく陽に焼けた男性がやってくる。「ちょっと休暇で、古井さん(仮名)じゃないですか、どうしたんですか。マレーシアから日本に帰ったのでは」「今日は長澤さんと一杯やりにやってきたんだ」「マレーシアから」「いいや、今バンコクに住んでいるんだ。」この人も技術者として東南アジア各地で長い間働いていた。その後タイに住み着いたようだ。

このホテルは会社の人間がよく利用するホテルなので、懐かしさ半分で待ち合わせに使っているそうだ。お互い時間はたっぷりある。それからも長い話が続いた。「行く前にちょっとトイレ」と言って長澤さんがたち上がる。その後姿を見ながら古井さんに聞いてみる。人の不幸は密の味である。

「長澤さん、根こそぎやられたらしいですね」「そうなんだ、馬鹿だよねぇ」「でもあんまり恨んでいないようでしたよ」「そうなんだ、あいつメイドに家の世話だけでなく、下の世話までして貰ってたんだ」「オムツ」もちろん冗談である、今の60代は若いのである。「愛人ですか」「そうとも言うね」

「それがね、別の女ができて、彼女に払うお手当がもったいなくなったんだ。転職を理由に値下げをした。首にしなかったのは彼女にも未練があったからなんだ」「ところが女の感は鋭い。別の女ができたのに気づいた。その夜の彼女の怒り方は凄かったそうだ。なんとか宥めて帰したんだが、次の日に、家はも抜けの空になったらしい」

不思議の国タイ 死体雑誌に死体博物館

「怖いですね」「怖いよ、タイの女性を怒らしたら。浮気した男が妻や愛人に拳銃で打たれる事件は多いよ。おっ、長澤さんが来た、行くわ」「日本へ帰られたまた飲みましょう」古井さんは元気よく立ち上がり玄関へ向っていった。いい歳をした爺がどこへ行くのやら。古井さんも女の武勇伝がある人だ。タイの女性にハマるのは事務系より真面目な技術マンが多いようだ。

日本の女性はアジアの中でも特別に優しい。浮気をしたからといって殺される男は稀である。だが東南アジアの女性は男に尽くす反面裏切られると怖い。課長島耕作に、フィリピンに駐在する会社員がフィリピン女性の愛人を裏切り拳銃で撃たれる話がある。そんな自分もベトナムのニャチャンで女性を怒らして怖い目にあった。

そんな怖い女性たちの中でも、愛と微笑みの国の女性はいちばん怖いのである。刃傷沙汰も多い。怒りの激しさは優しさと比例するのかもしれない。かつて、タイには死体・犯罪雑誌というのがあって(アチャーガムは廃刊されたが今も191はあるかもしれない)コンビニで売られていた。事件や事故の被害者の生々しい写真や女性が載っている。そのなかに痴情のもつれの事件がけっこうあった。浮気の代償は鉛の玉とは堪らない。

この雑誌もそうだがタイの人は死体が妙に好きである。私は苦手なので遠慮しているが死体博物館というのがある。シリラート医学博物館といい本来は医学生が解剖学を勉強する施設である。大きなシリラート病院のなかにある。それを300バーツで一般公開して誰もが見られるようにしている。この辺りの感覚が微妙なのだ。

見た人の又聞きでは、奇形の赤ん坊や内蔵、水死体などがたくさんの展示されている。シーウィというタイの連続殺人犯の標本もあるそうだ。話を聞くだけでも肌が泡立つようで、全く行く気にならないがけっこう人気がある。タイの人はお坊さんが大好きでフィギアがたくさん売られたり、お守りの専門雑誌や熱帯魚のベタや軍鶏の専門誌、鳥かごの専門誌などマニアックな雑誌がある。なにか不思議な国なのである。

マッサージパーラーが具合が良い時もある

さて寒気がするので少し温かい話に移りたい。長澤氏も古井氏も齢は60代後半だが下半身はまだまだ元気で色んな遊びをしている。その長老の話だがコロナで閉鎖が続いたマッサージ・パーラーが2024年には復活している。有名なポセイドンも営業再開している。マッサージ・パーラーはお風呂に入れてお世話してくれるから年寄りには具合が良い。

ポセイドン以外にも、ポセイドンの近くにできたラリサ、ブラックキャビアやエマニュエル(閉店したのがまた開店した)、バレンシアなどがやっている。どこも2500バーツから11000バーツと少々お高い。だから、もっぱらビワカフェへいくことになるそうだ。

ビワカフェは、お値段が90分で、1000(4600円)〜1300バーツ(6000円)と圧倒的に安い。ドリンク代やチップをいれても1500バーツくらい。ただ女性が30代から40代くらいになる。熟女ばかりだがそれ故に濃厚なサービスがあるそうだ。私らの年になれば、40代くらいが落ち着く。また金魚鉢の側にちゃんとしたレストランがあり食事ができる。彼らは始める前か終わった後か知らないが、そこで飲むこともあるらしい。

熟女マッサージ・パーラーか、それも良いかもしれない。思いついたら善は急げである。早速行くことにした。(ビワカフェの熟女は本気をだしたに続く)

バンコクに住む理由

東南アジアに住んでいる日本人は2種類いる。若い頃から遊びや事業で住んでいる人達、反社もいる人達がいる。また長澤さんや古井さんのようにサラリーマンとして駐在して、定年を迎えてからもそのまま住み着いてしまう人達だ。どちらも東南アジアの魅力に取り憑かれたのだが、それはどのような物だろう。

一つは社会の雰囲気である。日本社会は豊かで清潔だがなんとなく堅苦しい、人の目をいつも気にしていないといけない。コンプライアンスやハラスメントが厳しすぎる。会社も同じである。伸び伸びと働き自由に研究できた昭和の時代は去り、窮屈なサラリーマン生活をしないといけない。それが東南アジアにはない。時間はのんびりと流れ心の自由度が高い。そこに嵌ってしまう。長年時間に追われる厳しい仕事を続けたサラリーマン生活、そのあとのご褒美としては最高だろう。

そしてもう一つは女性である。今野敏という作家がいる。刑事ものを得意とするが伝奇的な作品も書く。陰陽師の主人公の鬼龍光一は言う「この世は陰陽の理でできているんです。男は陽、女は陰です。人は太陽から陽の気を貰わないといけない。だが男は陽、太陽も陽なので反発して受け取れない。だから女性と接し、女性経由で取り入れないといけないのですよ」恋愛や夫婦円満が重要な理由である。

タイは女性との距離が近い。日本ではある程度の年になれば世間体を気にする。女性を求めると変態爺とか言われてしまう。ここではそんな事は関係ない。気が向けばバービアやマッサージ・パーラーに行く。そこに明るくオープンな女性たちが待っている。老人は肉をたくさん食べないといけないように陽の気が益々必要になる。その陽の気が日本より簡単に安く得られる。彼らもきっとそれを求めて住み着いているに違いない。

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