タイ ハジャイ KTVの女性は軽薄なフェミニズムを粉砕した

タイ

20世紀が終わろうとしていた頃、タイの南部ハジャイにいた。重要なミッションのご褒美でやってきたのである。それは北新地のママをマレーシアのクアラルンプールに住む男性のもとに送り届ける使命だった。愛人のトランスポーターである。ジェイソン・ステイサムのように強くは無いが少しばかり英語が話せたので選ばれた。

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始めての東南アジア旅行は、愛のトランスポーターだった

ママは上沼恵美子を10倍凶暴にしたようなキャラクターである。フライト中に飲んだウィスキーの小瓶を隠すは、キャビンアテンダントに何かと文句をつけたりと大変だった。男性がエスコートをつけたのは、彼女がアジアに不慣れなだけでなくその性格を心配したのだろう。

ママは、マレーシアからタイへ越境するタクシーのなかでも運転手の愛想が悪いと怒りだした。運転手は無言である。周りはジャングルがあるだけ、こんな道で消されてポイと捨てられたら一巻の終わりだ。冷や汗が吹き出し生きた心地がしなかった。

着いたハジャイは大きな街でリトルバンコクと言われるそうだ。「ハート・ヤイ」が正式な名称らしいが、現地の人が発音すると「ハジャイ」と聞こえるので日本人は「ハジャイ」と呼ぶ。マレー半島を北上するランカウェイ・エクスプレスの終着駅でマレーシアの影響が強い所である。

知らぬが仏、ハジャイは怖いところだった

近くに綺麗なビーチやタイ最大の淡水湖ソンクラー湖がある風光明媚なところらしい。らしいなのは観光をしなかったからである。当時は治安が悪かったらしく後に国際担当の役員から聞いたのは「よう行ったな、あそこは麻薬組織とイスラムテロ組織の本場やで」だった、ジャングルの中の道の出来事や深夜の街で食事をしたことを思い出してゾッとした。今はそんなことはないらしい。

そんな怖いところ(この時はまだ知らない)でも日本語の看板が有る。ここでも頑張っている日本人がいるんだと少し感激する。ただ看板はあっても日本語どころか英語もあまり通じない。そんな街で夕食は男性とママ、トランスポーター3人でタイシャブを食べることになった。

ママはここでもひと悶着を起こす。「辛子が欲しい」というのが通じない。「マスタード、マスタード」と叫ぶ。店員はオロオロとしている。「こんなん通じへんっておかしいやんか、マスターが出てきたら笑うで」「そんなことはあらへんやろ」「What happened?」本当にマスターが出てきた。

タイシャブはたいへん美味しかったが、騒がしいママのせいで落ち着かない食事になった。ママをホテルに送りやっと男たちの時間がやってきた。日式KTVへ向かう。いよいよご褒美を頂くのだが、当時の私は青くさくてカラオケは良いがお金で外国の女性とひとときを過ごす行為に抵抗があった。

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旅の教訓 KTVでは難しいことを考えず本能に身をまかせよう。

女性をお金で買うイメージ(その通りなのだが)が嫌だった。でもカラオケだけだったら良いかな、と下半身が上半身を説得した。店では指名をしなくてはいけないが、始めてだったのでドキドキする。この夜がアジアンカラオケの旅の始まりだった、カラオケ記念日である。

指名は誰よりも早く、胸の大きい白いツーピースの女の子を指名した。青臭い理屈はどこへいったんだ、そんな自分が少し恥ずかしい。女性は日本語がほとんどわからない、カラオケも日本の曲が少ない。しかたがないのでタイのポップスになるが思いのほか楽しい。タイの曲はアップテンポで明るい。今もタイのバンドは人気がある「タクシー」という曲が気に入って何回も歌うと女性たちも楽しそうで、時を忘れるというのはこのことだ。

いよいよホテルへ帰る時刻がやってくると上半身が再び主導権をとり始める。彼女は当然一緒に帰るものとニコニコしている。一緒に帰るのを遠慮すると「私に恥をかかすな、とりあえず部屋までは一緒に帰れ」と男性の一喝され頷くしかなかった。仕方が無いから部屋までは帰ろう。

男性は愛人とホテルに帰った。トランスポーターの一人がホテルへ帰る途中何かを食べようと言い出した。女性たちに身振り手振りで伝えると大賛成だ。これもまた楽しい。ホテルに着いて一人の部屋で飲み直そう伝えると女性たちに動揺が走った。言葉が伝わらないのがもどかしい、どうやら乱交をすると思ったらしい。こちらも他の男の前で自分に物を披露する自信はないので自分の部屋に戻った。

旅の教訓 女性の立場を考えよう。

「帰って良いよ」再び青臭くなった私が部屋に入りタクシー代を渡して告げると、彼女はたちまち悲しそうな顔をする。その表情が心に刺さる。早く帰ると客に不満を与えたと叱られるそうだ。ここでやっと彼女たちのおかれた立場を理解した。日本とは違う。

「それじゃお願いしようかな」彼女の顔がパッと明るくなる。こんなおっさんに見せるにはこの笑顔、可愛いすぎる。この瞬間脳の主導権は下半身に移った。脳内は青からピンクに変わる。先にシャワーを浴びバスルームから出てくると彼女が一生懸命テレビを見ている、日頃見ていない雰囲気でちょっと切ない。

彼女もシャワー浴びて側にやってくる。胸は思った以上に大きくゴムボールのような弾力だ、これはいい。行為自体は素朴だったが身体がなんとも素晴らしい。青臭い理屈をつけていた男は2回もお願いしてしまう。彼女は嫌がることもなく応じてくれる、ほんとうに良い嬢である。その後もテレビを見たそうだったのでずっと見ていて良いよ、適当に帰ってねと100バーツを渡して眠ってしまった。

他の女性に怒られた

朝起きると彼女はいなかった。なぜか寂しさが押し寄せる、この残念な気持ちはどうしたことだろう。その感情のまま朝食に行くと他のメンバーがカップルで座っている。「おはようございます」彼女たちが早口に何かを聞いてくる。言葉が通じないので分かりにくいが要約すれば次のようだった。

女性A「あの娘はどうしたの」私「タクシーで帰ったみたい」女性B「どうして帰すのよ、一緒に朝ごはんを食べたら良いじゃない」「早く帰れたほうが良いと思って・・・」女性AB「早く帰ったら、ボスに怒られるかもしれないわ、そうなったらあなたのせいよ」男性AB「そうだ、そうだ」なんなんだこの展開は、周囲の日本人サラリーマンがジロジロ見てくる。とても恥ずかしい。一番残念なのは自分だと思うが後のまつりだった。

東南アジアのKTVデビューは終わった。ここから私の長い遍歴が始まる。日本でアジアのKTVは批判されることが多い。日本人が行くからKTVが流行るのだと言われる。それぞれの国はそれぞれの事情がある。日本のように豊かな人ばかりではない。日本の基準で他国を批判するのは果たして正しいのだろうか。

彼女の笑顔は軽薄なフェミニズムを粉砕した

彼女たちも同じだ、彼女たちにもそれぞれの事情がある、日本人がわからない厳しい現実にいる娘もいる。「フェミニズムはお金をくれないよ」と批判を聞けば笑うだろう。遠いところで小難しい事を言っても仕方がない。彼女たちには生活がある。彼女たちとの過ごす時間は楽しい。特殊な環境の時間だがお互いが楽しくできれば良いのだ。嫌な人は行かなければ良い。

「部屋に残って欲しい」と言ったとき、彼女が見せた輝くような笑顔は、笑顔に隠された厳しい生活がゆえに私の軽薄なフェミニズムを木っ端微塵にしたのである。ハジャイに乾杯。

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