海を見ている。目の前に広がる海はまぁまぁきれいだ。振り返るとヤシの向こうにリゾートホテルが立ち並んでいる。砂浜ではたくさんの観光客が遊んでいる、年配の白人が多いようだが、若い人も日本人もけっこういる。日本女性と西欧女性の違いは遠くからでもすぐにわかる。白人女性は水着が小さくてお尻が半分以上出ているからだ。

ダナン ミーケービーチは良いところ
もっと大きな違いはお尻の大きさである。白人や黒人のお尻はとにかく大きい。横幅も厚みも日本女性の倍はある。大きなお尻を見ると、私のものなどその厚みに阻まれて到底本丸まで届かないと思ってしまう。やはり、アジア人はアジア人を相手をしているのが良いようだ。
などと思っていたら珍しく若い白人女性が二人通りすぎた。胸は大したことはないが張り切ったお尻がプリプリと揺れる。う〜んこれは少し固くなってしまったぞ。昼食が終わってからずっと4万ドンで借りた木のボンボンベッドに寝転んでいる。頭の上の唐傘おばけのような屋根が日陰を作ってくれている。
時折やってくる物売りのおばちゃんから買った生温いビール飲みながら、ひたすら海とお尻を眺め続けている。なぜそんなことをしているのか、一緒に来た3人がホテルが寝ていて夜まですることがないからだ。
彼らは観光にあまり興味が無い。彼らの体力と忍耐力は昨日のホイアン観光と偽装床屋で切れてしまったらしい。海を見る気などはもうとう無く、夜に備えて体力を回復しないといけない。そういうわけで一人でお尻を見るはめになったが、ミーケービーチは素晴らしく、ただぼんやりしているのも悪くないのである。

ダナンの夜は日式KTVで始まった
ダナンの旅は一人の男の言葉から始まった。男はとびっきりいやらしい顔をしながら「今、ダナンが良いらしいですよ」と言う。「それなら行ってみようか」夢枕獏の陰陽師ではないが「行こう」「行こう」となった。関空からホーチミン経由で10時間30分くらいのフライトである。料金は往復5万円くらいだった。ベドジェットだったら往復5万円くらいで行けるようだ。
着いたのが夕方だったのでまずは食事と居酒屋のような店に入った。喉が渇いていたのでビールをたのむ。LARUEという地元のビールを注文すると氷が入ったグラスと一緒に出てくる。一瞬、氷は大丈夫かと戸惑うが渇きには耐えられない。ビールは喉に染み渡るように胃へ落ちていく。東南アジアではビールばかりを飲むことになるが、暑さのせいか薄味のビールがまた上手い。
料理は白身魚にマンゴーの切り身を載せたのが特に美味かった。ここはカニやエビなどの海鮮料理が充実しているらしい。リソート地らしくベトナム料理以外の日本料理からステーキまでオシャレな店が揃っている。下心満載のおっさん達より女性が似合う街である。

カラオケの天女たちは地上に降りてこなかった。
ビールがまわってくると俄然調子が出てきた。「まぁ、初日ですからカラオケでもいきますか」「KTVは連れ出しNGでしょう」「なんとかなるんじゃないですか」「行ってみますか」と恋するインディアン人形みたいな名前の店に向かう。店に着くと白いアオザイを着た女性が迎えてくれる。黒い髪に白い肌、狭い肩から細い腰まで緩やかな曲線が続いて優雅に広がったお尻で終わる、アジアの柳腰である。
これは素晴らしい、下卑た笑いを浮かべていたおっさん達の顔が一気に引き締まった。これは一緒に帰れるレベルではないかもと不安を感じる。料金は65万ドン、安いじゃないか、女性を指名して飲み始める。日本の曲が多いのが嬉しい、まぁこんな可愛い娘たちが笑ってくれるのだから楽しくないはずがない。さり気なく聞くとやはり持ち帰りは駄目だった。
カラオケと美女の笑顔を堪能したところで「今日は疲れたから帰りますか」「そうですね、ちょっと疲れましたね」というみんなの顔に満足感が浮かんでいた。「アリガトゴザイマシタ〜」見送ってくれる彼女達の声が明るく響く。彼女たちは天女ようだったがホテルには一人も降り立たなかった。
だが今日は良い夢が見られるような気がする。おじさんたちの世俗にまみれた心は、蓮の花が開くような笑顔に浄化されたのだった。

旅の教訓 ハン市場で買わずに触ると怒られる
次の日はめったにしない観光をすることになった。朝から、ダナン大聖堂、ハン市場を見て、ホイアンへ行き日が暮れてから帰ってくる予定である。最初にドラゴン橋を見に行く、夜はライトアップされ火を吹くが、朝の光の中では建設機械のようで間抜けな感じだ。ハン川の河岸は遊歩道が整備されていた、どこの国でも河べりの散歩道は気持ち良い。
ダナン大聖堂は旅行雑誌の紹介通りピンクのかわいい(と言ったら怒られるか)教会だった。インスタ映えはするが札幌の時計台と似た雰囲気がある。しばらく眺めてハン市場に移る。市場は巨大であらゆるものが揃っている。お土産の小物はこういうところで買うと安い。
アオザイも2500円くらいで作れると聞き、誰かに買って帰ってかえろうかと思ったが、寸法をきっちり測らないといけないので止めた。お土産は小物にしようと、刺繍のついた小袋をひっくり返して柄を見ていたら「ドゥンドゥンバオ」ときつい声がかかった。
おばちゃんの顔が怖い。「ルックオンリーはダメ」らしい。そうそうに退散・・・別の店でポーチを買う。触るには最初に買いますとの意思表示が必要らしい。ただ触らないと柄を選べないと思うのだがルールだから仕方がないか。
買い物を終えてホイアンへ向かう。ホイアンはさすがに世界遺産の街だった、ランタンの明かりが夜の闇を引き立て幻想的な雰囲気に包まれる。昔の日本にあった懐かしい光景に少し似ている(ホイアンとダナンの偽装床屋のレポートは次回に)

旅の教訓 若いばかりが良いとは限らない。
海を眺めているうちにダナンは夕方を迎えようとしていた。彼らも起きたようだ。君らはバンパイアかというほど寝ていて元気でやる気満々だ。「今夜はVIPマッサージにいきましょう」「ホテルは調べてあります」でまとまった。「極太うどんのカオラウ」と「鶏肉の乗った炊き込みご飯コムガー」とバーバーバービールで腹ごしらえをして出陣する。
目的のホテルへ着くと、おじさんが出てきて案内をしてくれる。「マッサージ?、ブンブン?」と聞いてくる。「ブンブン」は日本でいう○○○のような隠語である。もちろんと首を縦にブンブン振る。そういえば「島田のブンブン」という演歌があった。野球選手はバットをブンブン振り回す。ベトナム人が聞いたらどう思うのだろうか。受付で120万ドンを払う。
部屋に通されると以外に清潔な感じである。ずいぶん待たされてやっと女性がやって来た。ちょっと熟女でチェンジと言う言葉が脳裏をよぎるが、まぁいいかと言うよりチェンジが苦手なので「どうぞ」と招きいれる。彼女はなんともいえない顔をしている。
「What happened」「You are a good person」もちろん片言である。彼女はこの店で年配の方らしい。だからチェンジされることがある。さっきも日本人2人に続けてチェンジされたそうだ(あいつらだ)だから今度もかとドキドキしていたらしい。それを聞くと会ったときより可愛く見える。
服を脱がしてくれてお風呂で洗ってくれてと甲斐甲斐しい。あっさりと終わるのかと思ったのが大違いの大サービスである。これはどうしたことだろう。やがて彼女は私の手をつかむとベトナム語で何か言う。

意味がわからない。妙に色っぽいなぁとぐずぐずしていると「I want」とじれったそうに言う。そうか、これがたまに聞くベトナム女性の「本気すっか」だった。ハリネズミが野獣と呼べるのならだが、私は野獣になった。
終わってお風呂に行くとまた体を洗ってくれる。首筋をゴシゴシ洗いながら何かを言っている、どうやら男の加齢臭はここからくるのでよく洗わないといけないらしい(なんのこっちゃ)それから前に手を伸ばして少し動かしてから背中をパチンと叩いてアハハと笑う。何か照れくさそうだ。私もつられて笑ってしまった。
ロビーに降りると3人が待っていた。「待ちましたよ~」「なに見栄を張ってるんですか」と声をかけてくる。ごめん、ごめんと言いながら「君たち、人は若さばかりではないんだよ。人間万事塞翁が馬だよ」と心のなかで呟く。すぐに「怪我の功名」かな、いや「残り物には福がある」と思い直した。

人に優しくすると優しさが返ってくる、人間が持つ共感という力である。それをダナンで味わうとは意外だった。「いいじゃないか、ダナン!」だがこんなことは滅多にない。「待ちぼうけ」の故事にならないように気をつけなければならない。
コメント