台湾 初めての一人旅 サウナは身も心も温めてくれた

台湾

キャビンアテンダントがカートを押しながらやってやってくる。笑顔を浮かべながら「ティキン、オア、ビーフ」「パードン」「ティキン、オア、ビーフ」「オオ、ビアー」「ビアー?」「ティキン、オア、ビーフ」笑顔の総量が減っていく。メニューを指させばよいだけなのだが焦ってそれを忘れている。

国際線の食事どきはいつも緊張する。一人旅ならなおさらだ。仲間がいると数を頼んで元気が良いが一人だと途端に弱気になる、気が小さいのである。そのくせに海外慣れしているように振る舞いたい。「この親父、慣れてないな」と見られるのはプライドが傷つく。器も小さいのである。

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微熱山丘は松山空港が便利

食事が終わると飛行機はもう着陸体制に入っている。眼下は東洋のフォルモサ台湾である。不安な気持ちを残したまま飛行機はドンドン降下して行く、松任谷由美ではないけれど不安は増すばかりだ。大丈夫だろうか。最初の関門、入国審査は問題なく終わった。

松山空港便は東京からしかでていない。この空港はすぐ傍にMRTの松山駅があり台北の中心まで10分とたいへん便利なのだ。「なぜ東京だけなのか、大阪差別やないか」大阪の親父は叫ぶがどうにもならない。今回は羽田からなので良かった。

空港の近くにはパイナップルケーキ(鳳梨酥)の有名店「微熱山丘」がある。鳳梨酥はホテルオークラが一番だが微熱山丘もなかなか美味しい。「CHIMEI」というブランドも美味い。今回自分に課したミッションの一つが「微熱山丘」の鳳梨酥を買うことだった。

地図で見る限り道は簡単そうだった。ところが歩きだすと道がまったく分からなくなった。住宅街に入りこんで迷ってしまう。こんなとき一人は不安である。小さな公園にいた二人連れの女性に道を聞くが上手く伝わらない。そうこうしていると一人の男が駆け寄ってくる。彼は何かを言いなが私のスマホを取り上げた。

女性と二言三言と会話して、ドスの効いた顔でこちらを睨む。女性に絡んでいると思われたのか、これはまずいことになった。しつこかっただろうか、まずい、まずい雰囲気ですよ。男は呆然とする私を無視してスマホをいじっている。やっぱりまずい状況のようだ。

謝ったら許してもらえるだろうか、と思ったそのときに、男はニッコリと笑いスマホが返ってくる。お姉さんもニッコリ笑う。スマホにはgoogleマップがセットされていた。みんな親切だった。マップを頼りに広い道に出ると「微熱山丘」はすぐ近くにあった。驚くほど簡単な道なのにわからなくなる、それが一人旅だ。店は日本人でいっぱいだった。

老虎醤温州大餛飩は、台湾の丸亀製麺、つるまるうどんだった

ホテルに着くと一人旅は意外とすることが無い。パイナップルケーキを手に入れると今日の予定は終わりだ。テレビのスイッチを入れ近くの胡椒餅店で買った餅を肴に台湾ビールを飲む。スマホでヤフーニュースを読む、これでは日本と同じである。観光でもしないといけないと考えているうちに寝てしまった。

目を覚ますと何かをしなくてはとの焦りが大きくなってくる。街に出て新光三越の周辺や地下街をあてもなく歩く。胡椒餅、北京ダック、飲み物の店や雑貨店を見るだけでも楽しい、と思おうとするが負け惜しみのような気もする。やがて日が暮れてきた。台北の2月は肌寒い。街を行く人たちは皆楽しそうだ、誰とも話さないのも寂しい。人肌が恋しくなる。

そのうえ腹も減ってきた。孤独は脳が社会から切り離されたと感じたときにやってくる。今は社会から全く切り離された外国人である。孤独が押し寄せるのも無理はない。こんな気分の時にすきっ腹はいけない。何か食べたいが値段の高い店やグループで賑わう店は余計に寂しくなりそうだ。

こんなとき日本なら王将かうどん屋である。そこで思いついたのが街で時々見かける饂飩の看板である。饂飩は「うどん」の古い文字である。うどん屋だったらお一人様が食事をしているはずだ。「老虎醤温州大餛飩」にしよう。入ってみると予想とおり日本のうどん屋と雰囲気が似ている。

家族連れもいるが一人で食べている人がいるもいる。今の私にぴったりである。お姉さんに何が美味いと聞くとどれも美味いという。そりゃそうだろう。サイゼリアのような注文伝票がドンと置かれる。伝票には菜肉大饂飩湯とか鮮肉大饂飩麺と書いてある。

饂飩麺とはこれいかにである、うどんと別の麺が一緒に入っているのか。頭痛が痛いみたいな感じで引っかかる。お姉さんに「うどん」ではないのかと尋ねると饂飩はフントゥンであると重々しい回答である。「ノット、メン?」通じるはずがない。お姉さんは笑いながら他の客の丼にある白いものを指差す。

旅の教訓 餛飩とはワンタンである

白くて餃子のようなもの、それは雲呑(ワンタン)だった。台湾では饂飩はワンタンだったのである。うどんのチェーン店でなくワンタンのお店だった。饂飩麺はワンタンメンなのである。よく見ると漢字も微妙に違う。饂飩でなく餛飩だった。腑に落ちたのとお姉さんの笑顔に癒やされる。

鮮肉大餛飩湯はワンタンで60元、香辣老虎麺は汁なし担々麺で65元、大衆食堂のように小鉢で置かれている小菜25元を注文する。缶ビールも頼んだ。ワンタンの出汁は薄味だがまぁまぁの味である。ワンタンはプリプリしてお姉さんの二の腕のようだ。香辣老虎麺はなかなか辛い、ペースト状のゴマダレはしいたけの出汁や辛い香辛料で味付けされている。

これを混ぜ混ぜして食べる。辛さをビールで薄めながら食べる、これが美味い。「ハオチー」お姉さんの困ったような笑顔に再び癒やされる。店をでると街の様相が一変していた。風景が白黒からカラー写真に変わったようだ。2月の風は心地よく道行く人からよそよそしさが消えていた。

餛飩は魔法の食べ物か。また孤独になったらここに来よう、ここはつるまるうどんや丸亀製麺のように独りの心とお腹を満たしてくれる。これでまっすぐ帰るのはもったいない。台湾名物の足つぼマッサージでも行きますかと俄然調子が出てくる。足つぼは気持ちよいがもっと気持ち良いところがある。そうだサウナへ行こう。私の孤独なぞこんなものだ。

旅に教訓 心が寒いときはサウナへ行こう

サウナは三温暖という。日本の大江戸温泉や極楽温泉のような形態でサウナに入り温泉に浸かりゆっくりする。加えてスペシャルなマッサージがある。サウナで身体を整え、体内に溜まった悪いものを全てデトックスできる。なんとも素晴らしい。若い女性が少ないらしいがそんなの関係ない、30代なら十分に若い。

女は若いほうが良い、男のあれは大きなほうが良いと同じ都市伝説にすぎないと負け惜しみをいいながら、名高いサウナの林森北路「金年華三温暖」にやってきた(現在、金年華三温暖はコロナで閉鎖中らしいです)一人で行くのは初めてなので期待と不安が交錯する、この興奮も風俗の醍醐味だ。

派手な看板のある入口から地下へ降り、受付でおばちゃんからロッカーのキーを受け取る。入場料は600元、12時間まで居られる。料金は後払いだ。食事やマッサージなど中で選択するメニューがあるからだろう。ロッカーに行きスマホやお金(バラで持っている)を入れたら準備完了である。

サウナのスペースに行くとけっこう人がいる。日本語が聞こえるとホッとする。サウナはそんなに好きでないので温泉に浸かって早々に食堂に行く。水を飲みながらおばちゃんからオファーを待つのである。おばちゃんと目が合うと「スペシャルマッサージですか」「ハイ」と妙に礼儀正しくなってしまった。

こちらはやっているようです

熟女はゴッドハンドを持っていた

「マッサージの上手な娘がいいね」「うちの娘はみんな上手」おばちゃんはにっこり笑う。スペシャルマッサージは3600元である。おばちゃんに案内されて個室に向かうのだが、この道がごちゃごちゃして暗くて怪しい。こういうとき一人は怖い、連れ去られても分からない。

やがてたくさんの個室が並んでいるところに着く。部屋はとても暗くて女性が若いか美人かなど到底分からない。感触だけで判断しなくてはならない。女性が入ってきたが案の定、顔は分からずシルエットのみである。ガシャガシャみたいだがチェンジはできる。

横になるとマッサージが始まる。「日本から来たの」「そうだよ」「うつむけになって」背中から腕、腰と柔らかい手が降りていく。本格的に気持ちいい。本来の目的を忘れて眠くなってくる。「気持ちいい?」「とても気持ち良いよ」「うふふ」この手の感触、声を聞くと30代後半だろうか。肌は餛飩のようにしっとりしている。

「仰向けになって」「ハイ」ついにやってきたか。手が胸からお腹へ太腿へと伸びていく。腕が既に固くなったものに微妙に当たる。「うーん」このテクニックは歴戦の勇者に違いない。「気持ちいい」さっきとは微妙に異なった甘い声である。餛飩の手が私を掴む。気持ちいい、ほんとこれはやばい。「うふふ」と笑いながら身体を寄せてくる。もうだめというところで彼女が準備をして上になる。後はされるがままだった。

旅の教訓 孤独は女性たちが癒やしてくれた

終わるとロッカー番号をサインして部屋から送りだされる、チップの要求はなかったがそっと握らすと優しくハグしてくれた。彼女は思ったとおり30代後半に見えた「日本人好き、また来て」とリップサービスも抜群だった。

サウナに戻り温泉に浸かりながら先程のマッサージを思い出す。気持ち良かったな。餛飩のような手に撫でられる感触を思い出したらまた固くなってきた。普通のマッサージとしても気持ち良かった。終わってから湯に浸かれるのも良い。食事や飲み物があり、女性と楽しいときが過ごせるとはなかなか良くできたシステムだ。台北にいったらぜひ行くべきだろう。

初めての一人旅で感じた孤独はもうすっかり忘れていた。悪くない一人旅だったがやはり誰かと一緒が楽しい。話したり笑ったりしたいのである。それが女性であればもっと楽しい。今日は出会った女性たちが癒やしてくれた。とりあえず彼女たちに感謝しよう。

そろそろ湯からあがろうか、でもこの大きくなったものはどうしよう。もう一回するべきか、ハムレットの心境である。できないくせに。

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