タイ プーケット 風俗 バングラ通りはけっこう手強い

タイ

昼に近いパトンビーチ、日本からわざわざ持って来たレジャーシートに寝転んで浜辺で遊ぶ人たちを見ている。コンビニで買ってきた缶ビールはとうに温くなり、つまみのカッパエビせんの袋も熱い。ほどよくまわったビールに睡魔が押し寄せてくる。仲間は昨夜のゴーゴーバーとバービア巡りで疲れてしまい今もまだ涼しいホテルで寝ている。ここは有名なプーケットである。

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旅の教訓 パトンビーチ・バングラ通りはけっこう手強い

世界的に有名なプーケットは16世紀から18世紀にかけて錫の採掘と国際貿易で栄えた島である。ポルトガルやオランダ、福建省からのたくさん商人や労働者がやってきた。鉱山、貿易の拠点ときたら飲食店と風俗が盛んになるのは必然だ。その歴史の通り今は観光地として有名だが風俗も盛んでバービアやゴーゴーバーがたくさんあるらしい。

その期待通り繁華街であるバングラ通りに多くの店があったが、バンコクのようにいかなかった。女の子が必ず付き合ってくれると限らない。昨夜は相手を見つけるために何軒も回り、相手が見つかった順にバラバラで帰ることになった。最後は私だったが、残り物には福がある、黒い髪に卵型の顔、細身に巨乳と理想的な女の子に出会った。

彼女の会話は面白く良く笑う。話は楽しいが合間にお立ち台の女性も見ないといけない、忙しくしているうちに、テキーラの威力は恐ろしい、すっかり酔ってしまった。彼女もホテルまで付き合う気はなさそうだ。結局一人で帰ることになった。

200バーツと高いレディースドリンクを何杯も奢ったおかげか「 Come again tomorrow. I can go with you」の声を聞いたような気もする。一見さんお断りの店の面接に合格したようなものか。明日も来てみるか、と考える頭から深夜の一人歩きの危険性がすっかり抜けていた。反省である

パトンビーチで出会った二人

「日本の方ですか」頭の上から日本語が聞こえる。バンコクで痛いめにあった経験から身構えて振り返ると中年のご夫婦が立っている。「写真をお願いして宜しいですか」渋い声である。Tシャツにタイパンツ、ゴムサンダルとラフな格好だが白いシャツは随分高価そうだ。こんなシャツを着るのはお金持ちに決まっている。

「良いですよ」と立ち上がりスマホを受取る。海を背にして奥さんは満面の笑みを浮かべる。それに比べてご主人はどことなくぎごちない。一緒に写るのに馴れていないので照れくさいのだ、自分もそうだからすぐにわかった。わかりますよご同輩、男の気持ちが通じ合う。

「もう一枚」「これでどうですか」「まぁ、お上手、あなた良い笑顔に撮れてる」奥さんの笑顔はハイビスカスの大輪が開いたようだ。「それは良かった」ご主人のお礼に答えながら缶ビールに手を伸ばすと空だった。「あら、飲み物がありませんわね、お礼に買ってきます」「いやいや、そんな」奥さんはもう背を向けていた。日本女性にしては大柄のタイパンツのお尻が揺れていた。

「奥さんと良く旅行をされるのですか」「いや3回目くらいかな、男同士では良く行くのですけど」これは同類に違いない。「お一人でご旅行ですか」今度は聞かれる番だ。「いや仲間と、みんなまだ寝てますけど」「昨日は遅かったんですね」羨ましそうな口調になった。

旅の教訓 女性はタイガーキングムがお好き

「妻が来たいというのでやって来て5日目です。一昨日は猫好きな妻の希望でタイガーキングダムに行ってきました。虎に触ったり写真を撮るんです。なぜお金を払ってまで猛獣に近寄らないといけないのか、怖くないのかと言ったのですが「大きな猫と思えばいいのよ」と、こともなげな返事でした。本当は僕、猫が苦手なんですよ」と苦笑い。

「だいたいあんな大きなものを猫と思える筈がない。虎は哺乳綱食肉目ネコ科ヒョウ属であり、猫は哺乳綱食肉目ネコ科ネコ属です。猫は大きくなっても虎にはならないよ、と諭したのですが「いきたーい、社長」と譲らない。これ以上は妻の虎の尾を踏みそうなので止めましたけどね」「はは、親父ギャグですね」

「赤ちゃんから成獣までたくさんの虎がいました。チーターもいる。入場料500バーツと写真や触る別料金がかかります。虎によって値段が違うんです。写真を撮ってくれる有料のスタッフもいる。若い女性に人気があるようであちこちから可愛い声が聞こえました。」

「妻も若い娘みたいに虎に抱きついている。それがけっこう可愛いい、ちょっとムラっときましたね。日本人女性が虎のしっぽを恐る恐る触っているのが見えました。その娘、巨乳なんです。あなたの触るべきはそれではないだろう。そしたら妻に肘で突かれた、何故わかるのか不思議ですな」

「小説家は猫と女が書ければ一人前だそうです。女は猫と同じ肉食獣で獲物の心が分かるのかもしれませんね」「文学的なことをおっしゃいますね」「虎はどうでしたか」「虎を触るのは珍しい体験だけどわざわざ行くほどですかね。でも虎の目はきれいだった、吸い込まれるようでしたよ」「女性は毛皮も好きですね」「そう、それで過去に何度も痛い目に・・・」類友である。

美味しい果実についての対話

「昼は写真を撮ってスィーツを食べたり、夜はタイ料理、ずっと二人きりで」話は続く「バングラ通りを歩くでしょ、若い子が踊っているとつい見てしまう、すると馬鹿みたい、というような顔をされるのです」「きびしいですね」

「手を伸ばせば届く所に美味しい果実がなっている。それもいっぱいですよ。中には苦い実もあるかもしれないが美味しそうな実もたくさんある。それを見るだけなんて。イスラム教のムハンマドは「せっかくアッラーが許し給うた美味しいものを勝手に禁じてはいけない」と言っている。それなのに拷問ですよ」

「たしかに、でも奥さんと一緒の旅行では無理でしょう」と面白くもない返事をする。「奥様とは」「1回だけ、虎の夜でした」「捕食されたのですね」「ははは」リゾートの浜辺でなんとも気の抜けた会話にである。奥さんが遅いなと街の方を見ると。

「あなた、こっち、こっち」奥さんが日陰で手を振っている。こちらへ来いということらしい「すいませんね」「いやいや冷たい飲み物は嬉しいですよ、人見知りしない方のようですね」「そうなんです、村上(仮名)と申します」「カモです」と歩きだす。

旅の教訓 シノポルトガル様式のプーケット・タウンは良いらしい

日陰にシートを敷いて向かいあって座る。奥さんのレジ袋からシンハービール、ソーセージ、タイのポテトチップスが出てきた。初対面の違和感がない。「こちらはカモさん、仲間と来られているそうだ」「まっ、殿方だけで」「そうなんですよ、たまには有名な観光地にと来たのですがどうも似合っていないようで」「主人と同じことを言ってる、うふふ」楽しそうだ。

「かもさん、プーケットは如何ですか」「いいところですね、昨日繁華街を歩いただけですが」「あの若い女の子が踊っている通りね、主人が好きなんです」「男はみんなそうだよ」とご主人。私が頷く。「まぁやっぱり」奥さんの目が丸くなる。「今日のご予定はどうなさるの」「いつもは街をぶらぶらしてますね」「それだったらプーケット・タウンが良いですわ」

プーケットタウンは、ヨーロッパと中国の文化が交じり合ったシノポルトガル様式の建物が残る街で、パステルカラーの建物が女性に人気のインスタスポットになっている。建屋はホテルやカフェにアイスクリームショップ、現代風の雑貨店などに改装されて楽しめる。その他、無病息災のワット・ジュイトゥイや恋愛運のワット・プッジョー、学問や商売繁盛のワット・セーンタムなどお寺を観光するのも良いらしい。

「夜になったらバングラ通り、殿方だけだから楽しめますね、ねぇ、あなたもご一緒させて頂いたら」いたずらっぽい目で主人を見ながら、ソーセージを咥えてビールをゴクリ、色っぽいのである。海から吹いてきた風がヤシの葉を鳴らし、奥さんの髪を揺らした。

男というものは

「そろそろ行こうか、かもさんも予定があるだろうし」「そうね、かもさんにお会いできて良かった。日本語で喋る機会が少ないとやっぱりストレスが溜まりますのよ」一時間くらいも話していただろうか。「それに頭の中が女ばかりの人は主人だけでない、と分かって安心しましたわ」「ホテルにもう3人いますよ」

「全部5人、益々安心しました、おほほ」小早川玲子のように優雅に笑いながら「良い旅楽しんで下さいね」と手を差し出す。思わずmiladyと言いそうなる雰囲気である。ご主人をみると微笑んでいる。「良い旅を」と手を握った。二人は屋台のあたりで振り返り、ご主人は手を振り、傍で奥さんがお辞儀をした。奥さんの手はさりげなくご主人の腕に添えられている。

奥さんの言う通り、男の頭の中は女への想いが詰まっている。その半分くらいは妻が占めている。残りの半分に何があるのか分からないが、男は女に欲望を持つように出来ているのだから仕方が無い。結婚した男は生涯に何回くらい妻とするのだろう。

良く遊ぶ男でも妻のほうが多いに違いない。身体を重ねた回数は、年を取るにつれて夫婦の関係に効いてくる。お互いを許し合うポイントだ。貯まるほど寛容になる。それが大人の夫婦というものだ。

良いご夫婦だったなぁと海を眺める。またどこかで会いそうな気がする。そんなとき「I can go with you」と声が聞こえたような気がした。6000バーツくらい持って行けば良いだろうか。帰ってからちゃんとするから許してと心の中で慌てて妻に言い訳する自分がいた。プーケットの旅は始まったばかりである(続く)

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