フィリピンは怖い、そんなイメージをずっと持っていた。フィリピン、マニラ、夜、それに続く言葉が「怖い」なのだ。だから訪ねる勇気が無かったが、誘われて断れなくなってしまった。4泊5日の夜のツアーである。きっと危ない目に会うに違いない。ホテルは幸いにもダイヤモンドホテル、高級なので宿泊は安心だろう。キャバクラ街が多く有るマラテ地区も近い。さてどうなることやら。

マニラは、怖い街ではなかった
ニノイ・アキノ国際空港からマニラにタクシーで20分くらい。ベテランと一緒だからタクシーに一人で乗るときの不安は無い。ベテランが何やら運転手と話していると、メーターは運転手の帽子掛けになった。不思議なことである。
窓から見える景色は、他のアジア諸国と同じく独特の熱気に満ちている。混み合う空港の駐車場、荒っぽい運転、単に気温が高いせいだけではない。南の国では陰気になれないのだろう、みんな元気である。車が市街に入っていくと、警備員が大きなビルやショッピングセンターの入口に立っているのが見える。
手にはショットガン、装填されているのは実弾かゴム弾か、それとも空砲だろうかと考える。ショットガンの存在はジワっとくる。私のショットガンは最近不発だが、今回は実弾を撃ちたいものだ。人波にブルーのTシャツに帽子、腰には拳銃のグループが歩いている。拳銃は45口径のコルトガバメントだろうが、鈍く光っている。いったい何者なのかと訝しんでいると、運転手が、かの悪名高い(と言っても外国の人権派の話)が、フィリピンの人たちに人気があるドゥテルテ大統領の麻薬撲滅チームだと教えてくれた。

彼らは容赦なく麻薬犯罪者を射殺するらしい。噂ではドゥテルテ大統領自身が、ダバオ市長の頃、犯人を撃っていたそうだ。あの腰の銃も誰かを撃ったかもしれない。現場に出くわしたら流れ玉が飛んでくると思うとジワジワッとくる。やがて車はホテルに着いた。
妄想を膨らませた後なのでやれやれだと思う。車はホテルの入り口で止められ、近づいてきた警備員が柄のついたミラーで車の下を念入りにチェックする。爆弾が仕掛けらることがあるのだろうか。チェックが終わり車寄せで降りると今度は手荷物検査だ、シェパードも座っている。
空港と同じ金属探知ゲートをくぐってやっとロビーに入れた。この警備の厳しさはなぜだろう、またジワジワジワッとくる、マニラはやっぱり怖そうだ。

マニテ地区のキャバクラはパラダイス
夕方になったので街にでる。ベテランはおすすめの店の地図を持っているから大丈夫、暗い路地と裏道に入らなければ危なくないと笑う。ところが食事が終わっていざ出陣となったとき肝心の地図が見つからない、ホテルに忘れたらしい。これでは飛び込みでいくしかない。ほんと大丈夫かな。
どこに行きましょう、どこに行こうと相談するが結論がでない。とりあえずYOUKOと言う店ににはいった。心配しながら入ると時間が早いせいか客は少ない。その客が日本のお独り様ばかりなのには驚いた。女の子たちは入り口の近くに固まっている。そのレベルはびっくりするくらい高い。
席にやってきた女の子は胸が大きく可愛い、可愛すぎるくらいだ。彼女はほんとうにフィリピン女性だろうか。この娘たちが本物のフィリピン女性なら、日本でみているフィリピンおばちゃん達はいったい何なのだ。どうしたら、この娘たちがああなるのか、昆虫のように変態するのだろうか。驚きの連続である。
「飲み物いいですか」膝に優しく手を伸ばしながら囁く。悪いわけがないでしょう。「カラオケしますか」で舞台に上がってしまった。日本の中年のおっさんが次々と舞台に上がって来る。みんな可愛い娘と腕を組んで歌っている。日本のキャバクラのように女の子が直ぐに他の席に行ってしまうこともない。ずっと一緒だから楽しい。彼女たちと結婚する男が多い謎は解けたが、どうして変身するかはわからない。
けっきょく5軒もハシゴをしてしまう。料金は一軒でだいたい90分が500ペソ、指名料300ペソ、女の子のドリンクが300ペソぐらいだったと思う。今のレートで3000円くらい、日本のお独りさまがハマるわけである。バットプレイス、バットタイムのルールを守ればマニラは怖い街ではなかった。女の子は可愛いし値段は安いし最高かもしれない。


エドサコンプレックスは無くなった
次の夜はもう少し深く街を探索することになった。合流したメンバーと合わせて5人で初心者向けのゴーゴーバー地帯のエドサコンプレックスに向かう。(残念ながらエドコンはコロナで閉鎖され現在は普通のビルになっている)
ベテランの気分が途中で変わったようでエドコン近くのなんとかBayという店になった(記憶があやふや)大きな店で、正面に広いステージがありビキニやランジェリー姿の女の子が踊っている。ママに案内され席につく。踊っている女性の中にはスッポンポンになる子もいた。これは効きます。
踊っていたダンサーに席にきてもらいそのままホテルへ一緒に帰り、とても楽しい夜を過ごしたが、その話は別の機会にして翌日の夜の話である。今夜良い思いをしたので次の夜もまた行った。だが、あまり気に入った娘がいなかったので私だけ一人で帰ることになった。
交渉が終わり、みんなでタクシーに乗った。途中で日本居酒屋に寄ることになり女の子は大喜びである。南の国では陰気になれない、演技とは思えないはしゃぎ方である。カップルで座って宴会が始まった。若い娘の笑い声は良いもんだが、私はパートナーがいない、ちょっと寂しいぞ。
「何でも、食べていいよ」「食べるぅ」彼女たちはとにかく明るい、そして良く食べる。刺し身が好物らしく次々と頼んでいく。アメリカもそうだがアジアも魚は美味い。彼女たちの一番のお気に入りがサーモンだった。「お腹いっぱい」何度も注文しているうちに店のサーモンが無くなってしまった。

旅の教訓 みんながカップルで帰る時は自分もそうしよう
みんな楽しそうだが私は一人ぼっちだ。自業自得だけれど寂しいのである。帰りにホテルの近くのコンビニによると、みんなは、彼女たちからこれが欲しい、これはお土産と買い物カゴに遠慮なく入れられているけれど、その顔は楽しそうだ。私のカゴには誰も入れてくれない。とても寂しい。
カップルたちに付き合いきれず缶ビール2缶とツマミを買ってトボトボとホテルへ帰るハメになった。ホテルまで遠くないが人通りがほとんど無い。これバッドタイム、バッドプレースではないか。危ないかもしれないと冷や汗をかいた。

この寂しさは女の子と一緒に帰らなかったからだ。もうみんなと違うことをするのはやめよう。ショートで5000ペソ(12000円くらい)なら使ってもいいじゃないか、一人ベッドで飲むサン・ミゲールは苦いものだった。
でも窓から見えるマニラの夜景は悪くない。今度は失敗しない、また来たい街になった。
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