「ハロン湾に行きましょう」と一人が突然言い出した。普通なら観光などに全く興味が示さないメンバーである。「どうして?」とみんなが驚いて理由を聞くと、奥さんに「あなた、あの人達と良くタイやベトナムへ行くけれど観光地に行かないわね、いったい何をしているの」と聞かれたそうだ。

旅の教訓 男旅にはアリバイがいる
彼は観光に全く興味がない、下品に言えば夜に「やる」ことだけをもっぱらにしている。お土産も買わなければ風景の写真も撮らない、食事の場所は人任せと徹底している。各国にデートをする女性を確保していて夜の街に繰り出す前に会っている。一日何回も、気力体力ともに恐るべしである。
その一人に台湾のレモンちゃんがいる。なぜレモンちゃんかと言えは、とても濡れやすく、あそこからそこはかとなくレモンの香りがするかららしい。それは濡れているのではなく潤滑ゼリーとその香りだろうと思うのだが誰も口にはださない。日本のプロに聞くと潤滑ゼリーは韓国製が使い心地とコスパが良いそうだ。
奥さんへの言い訳は、大きな移動をしないが観光はしている、写真を撮らないのはみんなが撮ってくれるからだ。奥さんはそれを聞くと笑いながら「それじゃ、今度は写真をいっぱい撮ってきて」と答えたそうだ。彼は実は写真をいっぱい撮っている。だがコンガーイとの2ショットや怪しいのばかりだから見せられない。

旅の教訓 ベドジェットのキャビンアテンダントは可愛い
それでベトナムの超有名なハロン湾の話が出てきた。「ハロン湾は悪くないですね。いきましょう」と他のメンバーも乗り気になった。「ハロン湾にも風俗はあるんじゃないですか」「海に風俗はないだろう」「出発までに調べておきますよ」でとりあえずハノイまでいくことになった。
今回はベドジェットエア-で関空からハノイまでやってきた。他のメンバーは羽田からなのでノイバイ空港で集合となる。私は貧乏人なのにLCCを滅多に使わないが今回はベドジェットを選んだ。発着時刻が都合良かったこと、キャビンアテンダントが可愛いと評判だったからである。
大きな手荷物は持たない主義なので、荷物料を取られることもなくチェックインできた。座席に座るとやはりLCC、狭いのである。コロナ前だったので客室は満員に近い。通路側だからよかったが内側の席はつらいだろう。LCCは小柄な女性や若者の旅に似合う乗り物だ。
飲み物の有料は気にならない、何でも遠慮するたちなので返って気楽に頼める。ビデオも見ないので気にならない。バインミーを片手にビールを飲みながらキャビンアテンダントのお尻を見て過ごす。悪くないのである。彼女たちは化粧のせいか可愛いというより色っぽい。ベトナム女性はどうしてこんなに色気があるのだろう。総合すると、ベトジェットはちょっと狭いのを我慢すれば、コスパが良く目の保養になる。

私を置き屋に連れてって
空港で合流してタクシーでホテルへ向かう。車の中でハロン湾ツアーの相談が始まる。「ハロン湾のバイチャイという街にマッサージや置屋があるらしいです」「バイチャイはリゾートホテルがあるけっこう大きな街ですね」リゾートで街が大きいとなると必然的に風俗が発生しているはずだ。
「ハロンの風俗の記事はあまりないけれど、ツアーを申し込めばガイドが案内してくれるそうです」「安いホテルがやってるツアーが良いらしいですね」と話しは盛り上がる。だがハノイからハロン湾まではバスで3時間半はかかる、日帰りだとそんな場所へ行く時間はとても無さそうだ。
さてどうしようと相談しているうちにホテルへ着いた。今回予約しているのは、日本人にとってハロン湾と同じくらい有名なフォーチュナホテルである。超高級とは言えないがいつもの安宿とは比べものにならない。ここにもハロン湾ツアーはあるだろうが私たちが期待しているツアーはなさそうだ。
そこで思いついたのが定宿にしている格安ホテルである。あのホテルでもやっているのではないか。そうだねということで、フォーチュナホテルに荷物を置いてタクシーで出かけた。ホテルからホテルへといったい何をやっているんだか。ホテルへ着くと顔なじみのフロントマンがいる。

ハロン湾へのツアーはやっているかと聞くと、ホテルとしてはやっていないが「ツアーの斡旋はできる、あんたらの望みはガイドが叶えてくれるだろう」とゴルゴ13みたいなことを言う。ところでどこに泊まってるんだ、ウチへ泊まったらもっと教えてやるよと続ける。結局ここで申し込んだ。朝8時にホテルへ来いという。
旅の教訓 現地の旅行社は格安で良い
現地の旅行社で有名なシンツーリストという会社のツアーらしい。後でわかったのだが、この旅行社は人気がありそのせいで偽物会社が結構ある、私たちの当たったのもどうやら偽のほうだったらしい。日帰りツアーの予定ではやはり置屋やマッサージへ行く自由時間は無かった。「行ってみれば何かあるかもしれませんよ」と日帰りを申し込んだ。ツアーの内容など全く考慮しない良い加減さである。値段は70万ドン(4000円くらい)

男性ガイド付きハロン湾行きの中型バスに載っている。お客は欧米人が多い、日本人は私たちと旅慣れてみえる女性二人組だけだ。みんなTシャツに短パン姿である。白人の脚は太くて光の加減で産毛が光る。なんとも健康的である。それに比べて観光のワクワク感が全く感じられない二日酔いのオヤジ4人は完全に浮いている。
バスは2時間ほど走ってトイレ休憩をとる、そこでも買い物もせずにビールを飲む。また走って田んぼの中に奇岩が見えてくるといよいよバイチャイ港だ。大きな港でクルーズ船がいっぱい泊まっている。ひときわ大きな船は船上で一泊するツアーに使うそうだ。「クルーズの後に自由時間はあるの」と聞くと船から降りたらすぐにバスですよとの無情な回答。

旅の教訓 ハロン湾は想像以上に観光化されていた
クルーズ船は船室と食堂が1階で2階がテラスになっている。出航すると料理が出てくる、エビの茹でたものに春巻きの揚げたものなどがシステマチックに出される。揚げ春巻きは美味しい。この感じ、東京湾の屋形船の天ぷらが出されるのによく似ている、完成されたシステムである。
たぶん他のクルーズ船も同じ内容だろう。ビールは333が有料だった。食事が終わるころに奇岩や島がたくさんある海域に着く。岩に色んな名前が着いているのは日本と同じである。2つ並ぶと夫婦岩、お札の岩が香炉岩、奇岩が林立するなかを船は進んでいく。ハロン湾の名前は、ハ(降りる)ロン(龍)から来ている、昔ハロン湾に外敵が侵略してきたとき、湾に住む龍が宝石を投げて倒した、その宝石が島になったそうだ。
そう思って見ると有り難く見えるが、海はそれほど綺麗でもなくクルーズ船と物売りの船でいっぱいである。観光化されすぎたアジアの名所という雰囲気だ。アジア人は観光地に人が集まりだすと我先に金儲けに走る。京都の東山界隈の飲食店や八瀬大原の駐車場の呼び込みと同じである。

旅のお勧め ブイビエン水上村のボート観光は最高
そうこうしているうちにブイビエン水上生活村に到着する。ここで10万ドンを払ってボートに乗る。これまでの景観もまぁまぁだったが、ここのボートによる洞窟探検は船が小さいせいでドキドキした。思わず「俺は海賊王になる」と叫びたくなるところである。鍾乳洞探検は疲れただけであまり興味が湧かなかった。
鍾乳洞が終わると港へ戻る。帰りの船で感じる海風は気持ち良い。「写真いっぱい撮れましたよ、いっひひ! これで大丈夫、ハロン湾いいですね」と男が下品な声で話しかけてくる。「そうでしょう」ガイドが答える。写真に満足した男は「聞いて下さいよ、夜があるのか」と囁く。

旅の教訓 ハロン湾に風俗はあるが一泊が必要みたい
風俗はあるのかと聞くと「はは〜ん、こいつらやっぱり他の客と雰囲気が違うと思った」とでも思ったのか妙に納得した顔をする。声をひそめる「あるよ、私案内できる」と簡単に言う。「でも一泊でないとダメ、食事して8時くらいから行く、カラオケみたいなところ、50ドルくらいでOK」カラオケみたいなところは置屋らしい、マッサージもあるそうだ。50ドルのうち1割くらいはガイドが取るから30〜40ドルくらいが相場と考えれば良いだろう。
「こんど連絡くれ」と電話番号を渡された。「やっぱりあるんだ、今度またきましょう」情報も収集できたしアリバイも作れた、写真の男は満足そうだ。船の航跡を眺めながら「今夜は、やるぞ〜」と叫んでいる。龍に島を投げつけられるのじゃないか。
ハロン湾は一度は行って見る価値のある所だった。ツアーの種類が豊富で鍾乳洞探検や島への上陸など内容も豊富だ。途中にある陶器の村(バッチャン焼)も良いらしい。ただ旅行会社がいっぱいあるので内容や質を良く調べて行く必要がある。私たちのような不純な動機の人間も十分楽しめる観光地であるが、異国情緒は景勝地より雑踏のなかに感じられる。

旅の教訓 ベトナムではKTVがホテルにある
ハロン湾の置屋はどのような所だったのだろうかと一戦が終わった後で考える。ここはハロン湾ツアーから戻ってきたハノイのホテルのベッドの上である。少し汗ばんだ柔らかい乳房が脇に触れている。傍にいるのはホテルの地下にあるKTVからやってきたハーさんだ。細い腰と大きな胸が素晴らしい。
ここは地下のKTVから部屋へ一緒に帰ることができる。風俗の暗黒大陸になる以前の中国に普通にあったシステムだ。今はもうない、タイでも無くなった。ベトナムも豊かになればいこのシステムはたぶん無くなるのだろう。

彼女の値段はハロン湾の置屋の女性と比べると高いだろう。それだけに格段に良い女っぷりだ。満足はしたが、人との交わりに異国情緒を感じる私はハロン湾で女性と交わりたい。「女は女、みんな同じ。そんな遠いところまで行くなんて馬鹿みたい」決意を彼女に話すと一蹴されてしまった、全くである。
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