世界と本 「世界滅亡国家」男と言うものは

世界と本

突然で恐縮だが、男と女の行為は、イザナギノミコトが仰ったとおり、私の出っ張った所をあなたの窪んだ所に嵌めることで、それほどバリエーションに富んだものではない。ゆえにアダルトビデオの監督は最終的に同じになる行為をもって、いかに何度も視聴者を興奮させるか悩むことになる。

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AV監督の悩みと個人の体験記の悩み

興奮させる要素はまず女優である。容姿はもちろん、可愛い、清楚、妖艶、貧乳、巨乳、娘、年増と作品のできの半分は女優で決まる。次はスチュエーションである。OL、看護師、エステシャン、訪問販売の職業に加えて、職場、屋外、温泉など、女優との組み合わせが重要になる。

ちなみに、私が好きな作品は少し古いが「人妻温泉癒し系」や「朝ゴミ出しする近所の遊び好きノーブラ奥さん」である。どちらも場所の設定が素晴らしい。監督は、女優の選択や新しい状況の組合わせを工夫して作品を作る。それに比べ私の駄文は体験を書くだけなので登場人物も状況も限られる。

そのうえ、旅に出ても、写真はあまり撮らないし記録も残さない。忘れていることも多い。泊まったホテルの名前もメジャー以外は覚えていない。行った先の詳細な記憶や払った金額も忘れている。そんな風だから書くのに疲れるときがある。「誰も頼んでいないよ」のツッコミは正しいが書きたい欲求は許していただきたい。

Daniel NebredaによるPixabayからの画像

ギデオン・デフォー「世界滅亡国家史・消えた48ヶ国で学ぶ世界史」

そこでカテゴリーを一つ増やし旅の原動力となる本を紹介するのはどうかと考えた。溜池ゴロー監督の女優が脱がないチラリズム作品のような感じで、マイナーだけれど外国に興味が湧く本はどうだろう。お勧めの最初の本はギデオン・デフォーの「世界滅亡国家史・消えた48ヶ国で学ぶ世界史」にしたい。

タイやベトナムに入国するとき、日本に帰国するときは厳格な入国審査を受ける。そこでは国家の存在をしっかりと感じる。特に日本人は国家への信頼が強いらしいが、著者デフォーに言わすと国家は定義があやふやで確固たるものではないらしい。

確かにこの20世紀に超大国ソビエト連邦が崩壊し複数の国に分裂した、英雄チトーが統一したユーゴスラビアはもうない。現在繁栄しているベトナムの南半分は南ベトナムという資本主義国家だったのである。滅亡した国はけっこうあるのだ。

国家の定義はけっこう難しい

期間を近代までに広げると更に多くの国が滅んでいる。その殆どは個人の欲望や大国のいい加減さから生まれた国であり、歴史の教科書にも乗っていない。その建国から消滅までの歴史はおかしくもあり悲しい。

例えば、17世紀、南太平洋の島々、今のバヌアツの一地方にフランスヴィルという国が作られた。そこに住む原住民は、自分たち以外はみんな食べるという断固たる意志を持っていた。結局、支配者、宣教師や遭難者、すべて食べられて国は滅んだ。

ギデオンはこのような国(殆ど)を48ヶ国選んだ。本の最初に国家の定義を問いかける。国連に加盟している、ワールドカップでサッカーをする、ユーロビジョン・ソング・コンテストに参加する、チーズを食べる人たちの集まりか。単一民族、建国から連続した歴史を持つ日本のような国以外は、国の定義が意外と厄介なのだ。

何も良いことがなかったボトルネック共和国

かつてボトルネック共和国という名前からして怪しい国があった。第一次世界大戦後、戦勝国がフランスとドイツの国境ラインを適当に引いたので、どちらの国にも属さない空白の土地ができてしまった。暮していた住民は突然フランス人でもドイツ人でもなくなってしまったのだ。

住民は困って新しい国を作ることにした。国名は土地の形からボトルネック共和国にして、政府を作り首都をロルヒにおいて貨幣も発行した。ただ何も良い所が無い土地だったのですぐに無法地帯になる。最後はドイツの債権のかたにフランスになるがそれまで無法地帯のままだった。ボトルネック共和国は国民も領土も貨幣も首都もあったが存続できなかった。借金の担保になれただけだった。

有名なナポレオンが一時統治した国もある。彼は戦いに敗れて大陸からエルバ島に流された。各国の首脳は、国を与えておけば退屈せず新たな野心を持たないだろうとエルバ公国を与えた。最初は真面目に国家建設に取り組んだが退屈すぎて国を放棄する。統治者の気紛れでエルバ公国はエルバ島に戻ってしまう。

男の欲望で作られた国々

国を作った男たちの人生を眺めると、奇妙な共通点があることに気づく。父親を無くしている、母親に溺愛されている、浮気者、かつて軍人か文筆家だった、金遣いが荒い、夢想家の傾向がある・・・

                                                     世界滅亡国家史

国家を興すのはアレクサンダー大王やチンギス・ハーンのような英雄ばかりではない。19世紀から20世紀初頭、詐欺師やホラ吹き、霊媒師が国を作った。彼らの途轍もないエネルギーに呆れるばかりだが、個人の欲望で国ができてしまうのにも驚く。ただ欲望の産物で成立した国家は直ぐに危機を迎える。

フィウメ・エンデバー国のダヌンツィオ。 第一次世界大戦後、フィウメはユーゴスラビアに属する都市だった。そこに現れたイタリア人のダヌンツィオは、詩人、自己宣伝家、事象降霊術師、女たらしであり、ついでに言えば歯並びが悪かった。その男がフィウメを国にする。

トリニダード公国のハーデン=ヒッキー。 世界にはトリニダート島が2つある。ヒッキーは有名でないブラジル沖の島に国をつくる。理由は民主主義が嫌気がさしたから。英国に島の領有権を取り上げられて滅んだ。

コルシカ王国のテオドール・フォン・ノイホフ。 18世紀、彼は窃盗と錬金術師、悪魔払い師にして美貌の持ち主だった。その優れた外見を活かした詐欺でコルシカ島の王になったが、借金をするために出かけたオランダのパブで逮捕される。

セダン王国のマリー=シャルル・ダヴィッド・ド・マイレナ。19世紀、フランスで生まれて普仏戦争で英雄になった後詐欺師になる。ベトナム中部に渡り族長を騙してセダン王国を建国しマリー1世になる。財政難のために欧州へ戻り、国の肩書を売っているうちにフランスに領土を取られてしまう。

結果はともあれ国を作ってしまおうとするこの男たちのエネルギー、今のGAFAを作ったのも同じエネルギーである。男の欲望というのは良しも悪しも国や企業を作ってしまう力を秘めている。

あっという間にできて、あっという間に無くなった国たち

米国のカリフォルニアの一部の住民は、金の採掘税に反対してラフ・アンド・レデイ大共和国を建国した。米国は酒の販売を停止、大共和国の国民はすぐに国を取り下げた。

リオデグランデンセ共和国は、ビーフジャーキーの販売を禁止されたブラジルのガウチョが反乱を起こして作った。ブラジル軍と長い間戦い販売の許可を勝ち取ると独立の意思は急速に萎んだ。その歴史は国家というより大掛かりなデモだった。

歴史上よく知られた国も選んでいる。城で有名なバイエルン王国、清末の太平天国、モンゴルに滅ぼされたホラズム、ヴェネツィア、台湾(戦前)やユーゴスラビアである。それらの国の滅亡(というほど厳しくないのもある)のドラマは歴史の教科書に書かれたものより数段面白い。

単なる欲望や詐欺、不順な動機、大国の手抜きなど、滑稽な理由が動機の国はちょっとしたきっかけが滅亡に繋がる(そうでない国家もある)デフォーはそんな国の滅亡の原因を四つに分類している。

命知らずと変わり者 「変人」のせいで滅亡した世界史 (24国家)

誤りと自称独立国 「間違い」がもとで国ができたり滅んだり (11国家)

嘘と失われた王国 国家は以外と「虚言」で始まり終わる (9国家)

傀儡と駆け引きの道具 「他国」に振り回された滅亡史 (13国家)

                                          世界滅亡国家史
ZephyrkaによるPixabayからの画

日本人が知るべき 国家は砂上の楼閣

筆者ギデオン・デフォーはオックスフォード大学で考古学と人類学を専攻した作家であり、有名なアニメの脚本家でもある。作品がアカデミー賞にノミネートされたこともある。その才能は、滅亡国家の選び方と皮肉とユーモアが効いた語り口に現れている。

世界がまだ混沌としていた大航海時代、国家は簡単に誕生した。現代は国連のもと確固たる世界秩序が確立されているはずだったが、ISやロシアはそれが幻想であること示した。日本人の殆どは国があって当然と考えているが、その当然が甚だ怪しいことを笑いと共に教えてくれるのだ。国家は為政者と国民の思い込みの上に成り立つ砂上の楼閣なのである。

カナダの粋なはからい オタワ市民病院産科病棟

本に紹介されている国にオタワ市民病院産科病棟がある。その国は第2時世界大戦中、北米に一瞬だけ存在した 。オランダの王女がドイツの侵攻によりカナダに亡命した。彼女は長女を産む寸前である。オランダの法律は領土外で生まれた子供に王族の資格がないと定めている。そのとき、カナダが取った粋な図らいとは、ぜひ読んで頂きたいものである。

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