「日本はどうなっているの」メイちゃんが話しかけてくる。「外国人も多くなったよ、街で中国語や韓国語がよく聞こえる」「私もいけるかな」彼女は押しのバンドを追っかけて何度も日本に行っていた。今、二人が話しているのは忠孝新生駅に近いのホテルの一室だ。台湾のコロナの入国制限が終わったので試しにやってきた。

コロナの規制はすべて解除されたわけでなく、ホテルに家族以外の人と泊まるのは禁止だがショートステイは良いようだ。彼女はこの後は友人の家に泊まるという。
再びの台湾 ホテルの一室で
コロナによる渡航制限は解除されたとの情報はあるが台北の風俗の状況がよく分からない。状況が悪いときの保険として。メイちゃんに会えるかとラインをしたらOKだった。都合がつけばラインするよと返事をした。予感は的中して林森北路のKTVは閉店中だった。他の風俗は気乗りしなかったので、彼女に連絡すると気持ちよく高雄からやって来た。高鐵代はもちろん私持ちだ。

普通に入国できた
飛行機の窓から台湾が見えてくる。つい最近まで台湾の空港は上空から写真を撮影するのは禁止だった、それを知ったのはつい最近で過去に何度も撮影した記憶がある。いつ許可されたのか知らないが、松山空港は今でも着陸の際に撮影禁止のアナウンスが流れるそうだ。無知は強いというか怖い、中国だったら逮捕されてしまうかもしれない。外国の安全保障の措置を日本人の常識で判断してはいけない。
韓国でも、ソウルオリンピック以前、飛行機が金浦空港に着陸態勢に入ると、キャビンアテンダントが窓が閉まっているのを確認にきた。開いているともの凄い勢いでバシャっと閉められる。韓国のキャビンアテンダントの不愛想さとアラっぽさは清々しいほどだった。
閉めるのは空港は軍事機密に当たるからである。軍と共同使用だからなおさらである。日本も那覇空港や小松空港は自衛隊との共同使用だが、窓を閉める要請はなく着陸後の窓からはF-15イーグルや自衛隊機、海保の飛行機が見放題である。戦時中の国と平和な国の差なのだろう。
飛行機が着陸するといつになく緊張する。コロナが流行ってから初めての台湾だ。ちゃんと入国できるだろうか、体温測定で引っかかったらどうしよう、と心配したがすべて杞憂だった。以前と変わりなく入国審査は終わり出口で検査キットを渡された。
マスクは着けないといけないが、付けるのに慣れているから平気である。ワクチンは三回打っているので帰国も大丈夫。さて台北はどうなっているのだろう。

旅の教訓 台湾土産はオークラのヌガーを
ホテルにバッグを置くと、まずホテルオークラへパイナップルケーキを買いに行く。オークラはロビーが豪華なの気後れするがスタッフが気さくなので安心である。ここのパイナップルケーキは美味しいだけでなく、包装のフォルモサと少女のイラストが可愛い。微熱山丘やCIMEYも良いがここのを買っておけば、女性へのお土産は間違い無い。
もう一つのお勧めはヌガー(牛乳糖)である。こちらの包紙は絵がそれぞれに異なっていて楽しい。ヌガーは夜市でたくさん売られているが、味がなんとなくしっくりこない。ここのヌガーは日本人向けに味が調整されて口に合う。日本女性へのお土産にピッタリで、こちらも間違いがない。

十份の天燈上げは楽しい
メイちゃんとは林新北路のレストラン梅子で待ち合わせた。梅子の先にキャバクラが並ぶ一画があるが暗くてひっそりとしている。やっていないようだ。まだ時間が早いからかもしれない。彼女は、からすみとネギをつまみながら好物のビールを飲んでいる。「ねぇ明日はどうするの」日本語はネイティブに近い。「明日帰る」「えーっ、もったいない、観光はしないの」
「今回は仕事だから」「十份と九份とか行ったことある」「行ったことあるよ」「日本人に人気、ランタン上げ好きだね」「そうだね」と話しつつコロナ以前にいった十份と九份を思いだした。どつらもよく知られた観光地である。十份は天燈上げと滝、九份は千と千尋の神隠しで名高い。どちらの老街も道は狭くて、人でぎゅうぎゅうである。コロナのときは休むしかなかっただろう。

九份や十份とあれば、一份から八份も有りそうだがそうではない。九份は「開墾した土地を九人で分けたから」九份だそうだ。十份も同じく十世帯が住んでいたことに由来するらしい。昔はどちらも山奥だったから山賊に襲われることがあった。
十份の天燈は山賊から身を守ることから始まった。山奥にあった村は山賊にしばしば襲われた。村人は山賊がやってくると山に逃げ込み、山賊が去ると天燈を飛ばして連絡をとりあって村に戻った。今はその天燈が観光名物になっている。盗賊に奪われる側から観光客から儲けを貰う側に廻ったのである。
十份は台北市から電車で1時間、台湾三大ローカル線の一つ平渓線で行ける。まだ乗ったことはないが、一度は試してみたいものだ。十份駅の周りは懐かしい雰囲気に包まれている。民家や自然に囲まれた小さな駅は見るだけでも楽しい。以前いったときは、タクシーだったので原っぱにある駐車場に車を停めて歩いた。

釋迦頭は美味しいか
草いきれの強い道をブラブラ歩いて行くと道端に奇妙な果物が並べられている。昔の米国南部の奇妙な果実とは全く違う平和でありがたい果実である。突起が螺髪(らほつ)にそっくりなことからお釈迦様の頭、釋迦頭と呼ばれる。いったいどんな味がするのだろう、食べたら少しは賢くなるかもしれない。
天燈飛ばしをする街は唐突に現れる。線路の両側にお店がぎっしりと並んでいる。人が細い道に溢れている。天燈屋は何軒もあり売り込み激しい。人は線路の上にもたくさんいて、電車がやって来ると蜘蛛の子を散らすように逃げる、のではなくゆっくりと線路外に出ていく。電車は驚くほど人や家の近くを通り過ぎていく。
日本のホームドアが設置された無機質なホームと異なり、人間臭さを感じる懐かしい光景だ。安全は大切だけど個人にもっと責任を委ねても良いのではないだろうか。日本は何事も窮屈すぎるのだ。

旅の教訓 天燈の色には意味がある
天燈は一つ400元である。一つに字を書ける面が4面あるから、4人で飛ばせば一人100元になる。一人400円は安いのか高いのか、生中一杯分だから安いように思える。文字は筆に墨汁をつけて書くのだがこれがけっこう難しい。小さい字が書けない、墨が垂れて読めなくなる、ゆっくり大きく書くのがコツのようだ。メンバーの一人は自分が経営する会社の求人案内を書いていた、ほんとに電話がかかってきたらどうするの。
天燈を飛ばす作業の殆どは店員がやってくれる。線路の上から飛ばすのは悪戯してる気分だ。子供の頃、線路の上に十円玉や釘を置いて電車が通り過ぎるのを待った、通った後には薄く平らになった金属片が残る。大人にバレてこっぴどく怒られた、そんなことを思い出す。
天燈の飛翔力は強く舞い上がると見る見るうちに小さくなる。たくさんの天燈が空に昇っていくのは壮観だ。おっさん達の童心とは気持ち悪いが、天燈を見上げていると童心に帰ってしまう。(天燈上げは本当にお奨めです)
旧暦・元宵節には、願い事を書いた天燈を飛ばす平溪天燈節というお祭りが行われる。天燈の色は赤は健康運、 青は仕事運、黄は金銭運、ピンクは恋愛、結婚運とそれぞれに意味がある。次回はそれに気を付けて飛ばそうと思っていると、線路のうえに嬌声が響く日本女性の声はひときわ可愛い。また一つ天燈が飛ばされたのだ。
みんな無心で空を眺めて歓声を上げる。なんと平和で楽しそうなのだろう。習近平さんが余計なことをしないのを願うばかりである。


旅の教訓 風俗はラインの時代になっていた
さて現実の台北である、昼間にもKTVの通りを覗いてみたが開いている様子が感じられない、無料相談所にラインをすると、KTVは殆ど開いていない、デリヘリ、マッサージ、ピンポンマンション、VIPルームはやっているとのことだった。
メッセージには、VIPルーム8500元、ピンポンマンションは交通費込みで8000元、マッサージ8500元、デリヘル8000~15000元、デリヘルはレベルが高いが値段も高い。チャンスは今夜一晩だけ、どうする、どうするエロオヤジ・・・と悩んだ末にメイちゃんにラインをした。
ラインの問い合わせは便利である。言葉を気にしながら電話をしなくても済むし、聞きにくい金額もずばり聞ける。台湾の風俗はこれからもラインが主流になりそうだ。ただ呼び込みのお嬢さんを冷やかす楽しみが無くなるのは寂しい。感染症はいつも人類の歴史を変えてきたから風俗の形態が変わるのも仕方がない。だが呼び込みはぜひ復活してほしい。
さて梅子である。彼女は今は白身魚の清蒸を食べながらビールを飲んでいる。彼女たちはコロナの期間は大変だっだそうだ。店が開かないので個人ラインで営業していた小娘もいたそうだ。メイちゃんはビールと押しバンドのおっかけに使うお金が無くて困ったそうだ。店をでると街にたくさんの人が歩いている。マスクの人もいるが雰囲気はコロナ以前に戻っていた。

彼女は三年前と同じだった
彼女は、ホテルの近くのコンビニでビールを買って胡椒餅の店に寄ると張り切っている。餅を肴にビールを飲むつもりらしい。そんなことをしていたら時間がなくなってしまう、どうなるんだろうと心配したがまたも杞憂だった。彼女の手がやさしく背中に回される。3年前と同じように彼女の肌はすべすべで胸は柔らかだった。

さぁ小手調べは終わった。いいじゃないか台北と思ったとたん「高雄にも来て」と彼女が囁く。コロナのない世界はやっぱり良い。
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